Creating the World
□12話
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「おはよう……」
「おはよう、歌恋。……朝、ひどいのね」
自分がどんな顔をしていて、真姫がどんな目で見ているか、なんてことは気まぐれな天気よりも遥かに予想しやすいものだ。
「朝は弱いの……」
パジャマな私と違って真姫はきっちりと着替えていた。
一人暮らしでもやっていけるタイプの人なんだなぁ。
「まずは顔を洗ってきなさい。パンぐらいなら焼いてあげるから」
「あざーす」
言われるがまま洗面所へ直行。
「なんだ、やけに遅い起床だな」
着くなり朝に会うにはふさわしくない人に出くわした。
いや、宿題を写させてもらう時以外は極力会いたくない。生徒会的な意味で。
「生徒会長、今はまだ八時」
「六時起床が普通だぞ」
「あんただけだよ」
貴様は爺か。という言葉は胸の引き出しにしまっておいた。
「まぁ、剛のやつはまだ起きてないからお前に言うのもなんだがな」
「へー」
見た目どおりな奴で助かった。
なんか友達同士で一緒に寝泊りする時に自分が最後に起きるのって嫌じゃん。
「あ、香は今日起きないと思うから」
「へー…え?」
危ない、危うく原始人と同じ扱いをしてしまうとこだった。
「てめぇ、何したんじゃ。吐けや、コラ」
「おい、なんで俺が何かしたことになってんだ。昨日の戦闘で疲れたから寝てるだけだよ」
戦闘…戦闘…。
「あ」
ぽんと手を叩いてみる。戦いに行くとか妄言を吐いていた少女の姿を思い浮かべる。
「つまり朝に弱いと」
「……どういう経緯でその考えに至ったかは聞かないでおこう。それとあれはあれで朝は早い方だ」
「今日は虫取りに行く」
洗面所から戻ってきたときに目をギランギランに輝かせた少年を見た。
「無視するな」
「ぐへっ」
パジャマの襟を捕まれて女としてあげてはならない声を発した気がするが、忘れよう。
「今の私は真姫の焼いてくれたパンを求めているのだよ」
食事の邪魔をするものは拳の錆にしてくれよう、という殺意こもった目を向けてみたがこの原始人には通じなかったようだ。
「お前も行くんだから聞いて置け」
「何故行くことになっているのか三十字以内で答えてくれないかな?」
だいたい昼間に行ったところでいるのってセミだけじゃん。車の騒音よりはひどくないが夜の蛙の鳴き声と大差ないうざったい合唱を聞くのは趣味じゃない。
ぷにっ。
唐突にその音が頭の中に聞こえた。
「たまにはダイエットでもしたら?」
すれ違い様に真姫がわき腹を掴んできたのだ。
血の気が引いた。
よもや脂肪が掴めるほどまでに成長していようとは微塵も思ってなかった……。
「分かった、行く」
頷くしかなかった。
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