泣き顔より、笑顔を…。
悲しみより、幸せを…。
君に切に望む…。
エガオヲミセテ…。



「入るぞ」
襖が開けられ、現れたのは銀髪の少年。
「日番谷くん…」
「『日番谷くん』じゃない、『日番谷隊長だろ』」
「うん…」
「体の具合はどうだ?」
「うん、大丈夫…」
―――どっからどうみても大丈夫じゃねぇよ…。
「…まるでガキだな」
日番谷はボソッと呟いた。
「ガ…ガキって…!!何よ!?」
雛森はに日番谷に叫んだ。
「お前は昔っから、泣き虫でそのくせ人に涙は見せたくないみてぇなんだよ。だからどっか行ってよく迷子になって、俺とばあちゃんが必死で探して…」
「う、うるさいな!!」
「そういや、一度…」
日番谷との他愛もない会話が続く。この会話が雛森は好きだった。
―――日番谷くんとの話は、『あの人』のことを忘れさせてくれる…。
まだ癒えぬ、胸の傷。それをこの会話は、少し…ほんの少しだが、癒してくれた。
「…じゃあ、またな…」
そして、この台詞が嫌いだった。
―――この台詞を聞けば、また独りになる。この台詞を聞けば…。
雛森はそれでも必死で笑顔をつくり、またねと言った。
襖を閉め、日番谷は拳を強く握った。
―――できることなら、彼奴を…。
雛森のひきつった笑顔を見るたび、そう思う。思ってしまう。
羽織を翻し、日番谷は雛森の部屋を去った。



日番谷は、いつもどおり雛森の元へ向かう。
「…じゃあ、またな」
日番谷はいつもどおり、そう呟いた。
が、いつもは起きないことが起きた。
「…行かないで…。シロちゃん…」
弱々しい声が日番谷の耳に届く。そして、日番谷に抱きつく雛森。
「雛森…」
「…行かないで…」
ただ、行かないでと何度も呟く雛森。自分の羽織が濡れる感触がした。雛森の肩が揺れ、嗚咽が聞こえる。
「…ゴメンね…。日番谷くんだって、忙しいよね…。引き止めてゴメン…」
雛森はもう大丈夫と言い、無理矢理笑顔をつくる。
日番谷はため息をついた。
「…大丈夫じゃねぇだろ」
「…?」
雛森は首を傾げる。
「そんな顔で大丈夫なんて言うな。逆に心配になる」
「ゴメンね…。でも、もうだいじょ――」
「そんな顔じゃなくてお前の笑った顔が見てぇんだよ」
日番谷は少し笑った顔で言った。
「…」
雛森は思わず、何も言えなかったが、すぐに笑顔になる。
「うん…」

泣き顔より、笑顔を…。
悲しみより、幸せを…。
君に切に望む…。
エガオヲミセテ…。


あとがき
はい、自作の小説です。駄文ですみません…。
あと、『日番谷はそんな台詞は言わない』とか、『何故雛森を抱き付かせるの』などには触れないでください。
こんな台詞、言われたい的なノリで書いたんで。
感想(苦情はナシ)をぜひお聞かせください。
アドバイスなら受け付けますが、苦情は受け付けておりません。

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