書
□死ネタ
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明日世界が終わるとしたら、俺はお前を殺すだろう。
お前がいない世界なんて、終わってしまえばいいんだ。
でも最後の最期まで、お前に触れていたい。
七夕の夜、誓ってくれた。
「天に憲への永遠の愛を誓います」と・・・
信じていいんだよな?
「その命ある限り、真心を尽くすことを誓います」
嘘じゃないんだよな?
お前が本気なら、俺もそれに応えるよ。
でも俺は不器用だから・・・
「愛してる」って伝えるほかに、何が出来る?
残された時間があるなら、お前をきつく抱きしめてたい。
そよ風に揺れ、散った花びら
同じくらいに、この世界も壊れやすいんだろうな。
明日のことは誰にもわからなくて
泣ける程に、お前と過ごせる今が愛しいよ
未来を約束するよりも、今の俺を抱きしめて。
「慶二、もう終わりにしよう」
「・・・・・・」
「俺には、お前の望みを叶える事は出来ない」
「殺してもくれないの?」
「・・・最後の最期の望みなら、叶えてやらなくもない」
血まみれで横たわる慶二の腹から伸び動く触手、それは今にも俺を殺そうと狙いを定めている。だがそれらは慶二が俺を殺そうという気がない限り襲ってくる事はない。外国から持ち込まれた悪種なウイルスに感染した慶二、触手に腹を突き破られたものの平気な顔で生きている。ゾンビ化した慶二に残された選択肢は”俺にウイルスを感染させて同類にし世界を終わらせる”か”再生できないように木っ端微塵にされて死ぬ”かの二つ。コイツが選んだのは後者だった。
「憲の手で、俺の人生終わらせて」
「・・・後悔はないか?」
「あったらこんな事頼まずに感染させてるよ」
苦笑いを浮かべた慶二に抱きしめられて、初めて一滴の涙が零れた。抱きしめ返すと深い口付けをされる。
「愛してる」って伝えるほかに、何が出来る?
残された時間があるなら、お前に触れていたい。
そよ風に揺れ、散った花びら
同じくらいに、この世界も壊れやすいんだろうな。
明日のことは誰にもわからなくて
泣ける程に、お前と過ごせる今が愛しいよ
未来を約束するよりも、今の俺を抱きしめて。
「さよなら、慶二」
触手と頭を撃ったあと、倉庫を木っ端微塵に爆破させた。燃え盛る炎を見つめ、泣き崩れた。止まることを知らない涙は慶二の分まで流れる。七夕の夜、永遠の愛を誓って証拠にくれた指輪、ネックレスと化した二人分のそれを握り締め、俺は自分のこめかみに銃口をあてがう。
明日世界が終わるなら、俺の人生も終わらせよう。
最後の最期に慶二との思い出に浸りながら、引き金を引いた。
END