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□そばにいさせて
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気になる。
すごく気になる。
俺は村田聖吾。高3。
今、とてつもない視線を感じている。
気付いていない振りをしているが。
俺を見ているのは小野幸也。
学年一の秀才だ。
何でこんなことになってんのかというと。
それは昨日の放課後にまでさかのぼる。
「む、村田っ!!」
帰りのSHR後、小野に呼び止められた。
「何?」
「話があるんだけど、いい?」
「…ああ」
「あの…人がいないところで話したいんだ…ちょっと来て?」
?
「…ん」
そもそもこの時点でおかしかったんだよな。
「高橋、先行っててくれ」
俺は同じ部活のやつにそう言って、小野の後についた。
一体何だってんだよ。
勉強一筋で周りに目もくれないこいつが俺に話なんて。
校舎裏に来た。
「………」
小野はというと、うつむいて拳を固く握ったまま、何も言わない。
「で、話って?」
そう言うと小野はぱっと顔を上げた。
「うん…あの…さ…」
心なしか顔が赤いような…。
「…好き…なんだ…」
は?
「俺…村田のことが好きなんだ…」
俺が好き?
こいつは一体何を言ってんだ?
「どーゆう意味だよ」
「だから、好き…」
「その好きってのが分かんねぇんだけど」
「…恋愛感情…だよ…」
!?
はぁ…。
もう訳分かんねぇよ…。
なんで男の俺が男のこいつに惚れられなきゃなんねぇんだよ…。
「理由は知らねぇが、俺にはそんな趣味ねぇんだわ」
「理由なら…」
「俺部活あるから」
「あ、ちょっと待っ…」
何なんだよ、マジで。
とんだ厄日だな、今日は。