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□キスまで何ミリ?
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野分遅いな。

聞くところによると今日はポッキーの日らしい。

ポッキーゲームなんてものもあるが、まさかそんなこと野分がするなんて言うか?

いや、言うか。

「ヒロさん!ポッキーゲームしましょう!」

ってな感じで。

いや、俺がしたくて想像してるんじゃないぞ。

あくまでも野分が言いそうだなって。

ガチャ

「ただいまです、ヒロさん」

ん、帰ってきたか。

「おう、おかえり」

ガサッ

「帰りに買い物してきました」

「そうか」

野分が袋から買って来た物を出している。

ドクンドクン…

心臓がうるさい。

別に期待はしてないからな。

「あ、ヒロさん」

野分がこっちへ向かって歩いて来る。

くるのか!?

「これ、安かったから買って来ました。どうぞ」

ポッキーを手渡された。

「あ、ああ」

なんだ。

くるかと思ったが、野分は頭にもねぇのか?

なんか恥ずかしいじゃねぇか。

パコッ…カサカサ…はむ

俺がポッキーをくわえた瞬間。

「ヒロさん!」

名前を呼ばれた。

「ん?」

その声に振り返る。

はむっ

ポッキーの逆側をくわえられた。

「んん!?」

「離したら負けですよ」

負けだと?

誰が負けるものか。

ポリポリポリポリ

お互いに食べ進めていく。

野分との距離が近くなる。

徐々に速度が弱まっていく。

5cm。

3cm。

動きが止まる。

もう一回で…。

「どうしました?ヒロさん」

いつもしてるのに、なんか緊張する。

「せーのでいきますか?」

「ん…」

「せーの…」

俺は思わず目をつぶった。

ポリ…

あれ、触れない。

少し目を開ける。

噛む量、少なかったのか?

「もう一回です。せーの…」

俺はもう一度目をつぶる。

口を少し開けて近づく。

ふに

あ、触れた。

野分の唇。

ポリ…

ポッキーゲーム終了か。

ん?

なんか野分嬉しそうじゃねぇか?

「ヒロさんからキスしてくれましたね」

は?

俺から?

だって俺達は同時に…。

「お前何言って…」

「だってヒロさん、目、ぎゅってするんですもん。可愛くてつい」

「つまりお前は最後全く動いてねぇってか」

「はい」

何だとこのやろう!

野分のアホ!

「ヒロさん、真っ赤。可愛いです」

ふわ

野分が俺を抱きしめた。

暖かくて心地いい。

「お前ズルしたから俺の勝ちだ」

野分の背中に手を回し、ぎゅっと力を込める。

「はい、ヒロさん。俺の負けです」

あれ、そういえば。

「何で普通にポッキー渡したくせに、不意打ちで始めたんだよ」

「だってヒロさん、しようって言ったら照れてしてくれないんじゃないかと思いまして」

なんだ。

そういうことか。

「別に嫌じゃねぇから、不意打ちはやめろ」

「分かりました。じゃあ次からはちゃんと言いますね」

「ああ」

嬉しそうに笑いやがって。

ったく…野分ってやつは。

本当に。

大好きだ。
 

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