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□119だっけ?
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今日はお休みの日
居間でゴロゴロと寝転がる我が愛しの旦那を足でつついた



「なんでィ?」



めんどくさそうに振り返るのを雑誌を見ながらもチラリと見つめる
私が何も言わずに見てるとまた向き直って寝てしまう

もう一回乱暴に足でつついた



「…なんですかィ?」



今度こそ要件をはやく言えと鋭い瞳で睨まれるがしばらく黙って何を言おうかと考える
もう旦那が向き直ってしまいそう



「あともう少しで誕生日アル!」



咄嗟に出たけどその意味はちゃんと伝わるかなんてわからないような言葉
結婚したのは今年のこいつの誕生日なのだから、もっとラブラブでも良いと思う新婚生活なのだが
あまりにも普通の日常だ



「…誰の?」



やっぱりこいつは薄情者だ
持っていた雑誌をこいつの頭に投げてからソファーに寝転ぶ

寝転がってた総悟がむくりと起き上がってから恨めしそうに私を見つめる
寝転がりながら変顔で返してやったらそっぽを向かれた



「バーカバーカ」



やけになって子供じみた悪口を口にしたら今度は総悟がソファーに居る私のほっぺたをグイグイとつねられる



「いーひゃーいー!」



引っ張られてうまくしゃべれない
それでもやめる気配はなく
グイグイと引っ張られてほっぺたがのびきっちゃうよ…



「おーまーえーがーバーカ!」



半泣きになってきてる私を見てからニヤニヤしたらやっとほっぺたが解放される
両手でいたわるように撫でてみるけどまだジンジンと痛んだ

こいつが私の誕生日忘れたくせにー!

半泣きで睨み返す私が彼のツボだったらしくヤツは手で口を抑えつつ堪えきれない笑いが出てしまっていた



「お前が悪いくせにー!酷いアル!」



片手でゴツンと殴ると総悟はそのまま倒れてしまった
ざまーみろっと見下ろしてやるがピクリとも動かない

これは…もしかしなくとも…やばい…!?



「え!?かえってくるアル!」



ガクガクと揺さぶってみるけど返事はなく
これは殺してしまったかもしれないと血の気がひいていく

救急車!そうだ救急車を呼ぼう!

バタバタと電話の方に向かう



「え!?救急車って何番アルカ!?」



確か前も番号わかんなくて新八に教えてもらったことがあったのだけど…
そんないつも呼ぶものじゃないからわかんない!

これは万事屋に頼むか!

急いでいつもなんやかんやでかけてる万事屋に電話をかける

しばらくなってから「はい」と新八の声が聞こえて少しだけ安心する



「人殺しても捕まらない国ってどこアルカ!?」



「救急車呼べや」



バシッと今度は後ろから叩かれてまだ生きてたのかと舌打ちをした

慌てている新八を無視してガチャリと電話をきってたんこぶのできた総悟に殴りかかる



「トドメさしてから呼んでやるアル」



半分冗談のような本気のような声で殴りかかってから逆に総悟に組み敷かれた



「あ、この技意外と使えるねィ。」



たぶんこいつがいつも見てるプロレスの技だろう
かなり痛い
ギブギブと必死に泣き叫ぶとやっと解放された



「お前の鉄拳まじでつえぇんだから手加減くらいしろィ」



頭を氷水で冷やす総悟の横でバツの悪そうに今さっき投げた雑誌を広げる
今さっきは私の鉄拳によってちょっと気を失ってたらしい



「お前だからいいだロ」



謝る気もなくそっぽを向いてる私に総悟は冷やしてる方とは逆の手でまた私のほっぺたをつねる



「甘えるんならもっと可愛く甘えろィ」



私も左手を雑誌から離して総悟のほっぺたをつねりあげた



「はぁー!?何言ってるアルカー!?」



グイグイと総悟の顔をつねって変な顔にさせるとそれを見てついついクスリと笑った



「…何笑ってんでィ」



私によって変な顔にされた総悟はやっと私のほっぺたから手を離して不機嫌そうに尋ねた
だから私も手を離して不機嫌そうな顔に戻した



「そうじゃねぇ!」



いきなり怒る総悟にビクッと身体と心臓が飛び跳ねる
なんだヨなんてつぶやきながら振り返ったらほっぺたを手のひらで包まれる



「なんに笑ったんでィ」



少し眉を寄せて考えてみるけど、なんか怒らせた?
目をそらしてみるがほっぺたを両手で持ち上げられて無理矢理目を合わせられた



「何怒ってるアルカ?」



今にも泣きそうになってしまってる私に総悟は少し困ったような顔して総悟のおでこを私のおでこにくっつけた



「怒ってるんじゃなくて、笑わせてーだけなんだけど…。」



今さっきのは不機嫌そうな顔だと思ったけど、ただ単に真剣な顔をしていただけらしい
少し恥ずかしくなって目をそらしてから今さっき考えついた言葉を口にする



「チュー…してくれたら…」



言いかけた途中でチュッと音をたててキスをされる
恥ずかしくって笑うどころじゃなく真っ赤になってしまう



「笑わねぇのかよ」



もう一度コツンっとおでこを合わせてる総悟も恥ずかしかったらしく顔が赤い

うーんと唸ってからまた口を開く



「あともう少しで何の日か答えられたら「お前の誕生日…だろィ?11月3日…」



また恥ずかしそうな顔して様子を伺うような上目遣いで覗き込んでくる
今私は男がなぜ上目遣いで悩殺なのかやっとわかったような気がした



「…正解アル」



そう言って笑うと総悟も笑ってもう一度キスしようとした時だった
ガラリと玄関が開く音で固まりバタバタと走ってきてドアがバンっと開いた時には抱き合ったまま一緒にドアを見つめることしかできなかった



「神楽!今さっきの電話っ!!?」



言いかけてやめるのはたぶん心配して走ってきたであろう銀ちゃん
私たちがただ抱き合ってるのを見て頭を抱えて座り込む
後ろから急いで走ってきた新八と目があって
私はちゃんと救急車の番号を覚えようと決意した



119だっけ?



「旦那、邪魔しないでくだせェ」



「じゃあもう喧嘩しないでくれる!?」

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