SS3

□時
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ただ一人ぼっちで家の中に居た
破壊魔と呼ばれる私がこの世界に生まれたことが悲しかった
友達が居た時もあったのだけど、それはとても昔のようにも感じる
みんな少し大きくなるたびに私の異常な腕力を理解するごとに誰も近づかなくなった

植物や動物だったら遊んでくれるのにな

いつの間にか居なくなってしまったお母さんお父さんお兄ちゃん
全て覚えているのに覚えてないと言い張ったまま
一人でその家の中でうなだれる

もし、もっと明るい子だったら誰か構ってくれる?

自分の根暗さを知ってる
自分の力の強さを知った時からおとなしく振舞おうと徹してきたけど…
おとなしさと力の強さの違いをちゃんと理解してないよね
バカみたい

バカみたいと口に出してもう一度落ち込む
どうせこんなところが根暗なんだろう
どんな子だったら私もみんなの仲間にいれてくれるんだろう?

テレビをつけて毎日のようにドラマ、アニメ、特撮ばかりその世界はどことなく暗さを孕んで居ながらとても明るく見える世界だった
人間って汚くて、そこがあるから素晴らしさが輝くんだと思った
ヒーローだったり主人公だったり、絶対的な明るさや憎まれないキャラに憧れた

私もこんな風な性格だったらもっと慕われたのかなぁ…

毎日を一人で過ごしていたのに、誰かと関わりたくて仕方なかった
遠くで遊ぶ子供の声が羨ましかった

トントンと誰かによってたてられた扉を叩く音にやっと顔をあげる

誰かがきたのはどのくらい久しぶりなのだろうか
きっとお父さんならいつも鍵をかけてないことを知ってるし、お兄ちゃんだったらドアなんか破壊しちゃう

真っ暗な家の中から眩しい外を覗き込む
眩しくてちゃんと見ることができない
少年のような少女のようなそこに居る人間はみたことのない人

もう一度戸を叩く音にビクリとしてガタガタと音をたててしまう
しまったと思った時には扉が開けられていた



「やっと見つけたぜィ…」



扉をあけて見つめるとそれは少年でみたことのあるような、ないような
頭の中でデジャヴ感に浸る時にはその腕の中に包まれた
わかんないのに涙がポロポロと溢れた



「遅いアル…」



いつの間にか呟く言葉にたくさんの意味を含んだ
真っ暗な世界に堕ちた私なんか誰も知らないと思ってた
ただ堕ちたと思ってた私は隠れてただけで、違う

見つけてくれるのを待ってた
君を待ってただけ

その世界は決まってる
閉ざされた世界の中で決まった事を繰り返して
見つけられるまで何度私は生きて死んだのか
それともずっと生き続けてたのか
わからないけどそれはずっと長くて永くて

溢れる涙で心が潤う気がした



「好き」





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