SS3

□あと24ヶ月
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「お試し期間を儲けようと思うアル」



何やら堂々と仁王立ちをする目の前の女はちょっと頭がおかしいらしい



「お試し?何をでィ」



そのくだらない意味のわからない会話に突っ込んで行く自分も周りからは頭がおかしい奴と思われているだろう



「お前が私のこと好きなのはわかってるんだヨ!!!」



ずずいっと顔を近づけて追い詰めるように指をさされているが
なんの戸惑いもなく哀れみの目でこいつをみてやればまたムキーッと怒り出した



「で、なんでィ?」



まだ話に乗ってきたのが満足だったのかまた仁王立ちに腕を組むとふふんと鼻の穴を広げて自慢気に笑った



「お前がどうしても認めないようだから、お試し期間を作ってやるアルよ!」



「は?」



ムカつくドヤ顔で仁王立ちをするこいつの脳みそが心配だ
意味がわからない。わかる方がすごい。
あともう少しでなくなるチューペットをぺちゃんこになるまで吸うと隣のゴミ箱に捨てる



「だぁかぁらぁ、お試しでお前の彼女やってやるって言ってるアルよ!?」



実際彼女居ない歴=年齢の俺としてはそれは興味のある言葉だけど…
お試しってなんだ。
彼女になられたところで扱いなんて知るか



「先っちょだけいれさせてくれるってことかィ?」



「んなはずねぇダロ!童貞しねヨ!」



友達と彼女の区切りがなんなのかわからない
漠然とくぎるとしたらエッチするのが彼女でしないのが友達かなぁ?くらいである
世の中セフレとか変なカタカナ言葉があるが周りにそんなのから縁遠い奴ばかりからかちょっと理解できない



「デートしてやるって言ってんだヨ!!!」



俺が頭の中で俊足に考えてたであろう数秒が我慢できなかったのか痺れを切らしたように怒られた



「デート…ってなんでィ?」



友達と出かけるのと何がどう違うのだろう
最後にラブホに入れば良いのだろうか?
結局はエッチ?



「先っちょだ「だから違うって言ってんだロ!?」



ハアハアと息を切らすように突っ込む姿は色気など微塵も感じない
息を切らすってけっこうエロいと思うんだけどなぁ



「えっと、映画とか…遊園地とか…?行くアルよ!」



こいつもそんなに理解してないんじゃねぇか
俺もよくわかってねぇが…
そう言えばとっつぁんの娘は遊園地で彼氏とデートしてたっけ
思い出したがうんこのくだりばかり思い出してどんなものかわからない
とりあえずジェットコースターの安全ベルトはちゃんと締めようとは思う



「映画とか…見てぇのあるのかィ?」



自分は流行があまりよくわからない
それなりにしゃれてると思うものはあるし、あれ良いなーと思うこともあるがそれが流行ってるかと聞かれたらたぶんとしか答えられない



「は?ねぇヨ」



バカにしたように吐き捨てられるのにイラっとして地面を蹴って軽く砂をかける



「何するアルカ!?」



「何も?」



澄まし顔で流せば怒り狂うのはわかっているがその計算通りにかわる表情たちを見て楽しむ
良い趣味ではないだろうがこれが楽しいのだからしょうがない



「見てぇのないなら行かなくて良いだろィ?」



まだまだ怒ってるチャイナを視界のはしに入れつつ隊服を整える
そろそろちゃんと見回りに行くかと思えるくらいの時間帯にかわってきたのだ



「じゃあ、遊園地で良いアルよ?」



スカーフまでちゃんと整え終わるとサボっていた公園の出口へ向かう
そんな俺のすぐ後ろをチャイナがついてきていた



「俺と遊園地行って楽しいと思うかィ?」



結局は喧嘩を並ぶたびにするだろう
余計仲をこじらせるだけのようにしか思えなかった



「楽しくするのはお前次第ダロ!私はお前に連れて行かれるだけアルからな!」



なんて傲慢な姫君なのだろうか
お試し期間とかデートとか勝手に言い出したのはこいつなのに
何故か振り回されている
俺だけが体力を消耗しているような気さえしてきた
ふうっと小さくため息を吐く



「しばらく忙しいんでィ、パスな。」



振り返るとふてくされた顔したチャイナがいて
こいつはそんなに俺とデートしたかったのだろうかと少しだけ心が痛んだ



「お前…私のこと好きなんだロ?」



不機嫌そうな顔はまだまだ幼く見えた
意地になってるだけかも
こいつならそんな感じだよな。どうせ。
振り回されるのは俺ばっかりだ
今度は俺が振り回してみたい…



「嫌いでィ」



そんな事を願ったところで俺は頭が良くない
もっと大人ならうまい返答とかがわかるのだろうか
いや、男は子どものままだとも言われるしな
そっちの方が楽しそうにも思うしな
言い訳をしたところで大人っぽくなりたいとかそんな野望は消えないもんだ



「バカ!!!」



あまりにも考え込んでいた俺は不意打ちで暴言をくらいビクッと心臓がはねた
もちろん、表情は冷静を装っているが

チャイナを見下ろすとやっぱり子どもっぽい怒った表情だった
これ、可愛いと思ってるのはもしかして犯罪?



「…バカかもねィ」



好きなんだろうな、これ。
うなだれたいような重たい気持ちに変わってしまう
キュンキュンするとか例えられるけど、そんな可愛いもんじゃない
恋する乙女みたいな自分に若干の嫌気がさす
これで好きって認めたら犯罪だとしか思えない…

まだこいつ14だったか…

ふてくされたチャイナの頭をガシガシと乱暴に撫でてみる



「…二年たったらまた考えてやらァ」



もう既に結婚とか考えてる自分を曝け出してる時点でアウトか
チャイナにもすぐにわかってしまうよな

チラリとチャイナを盗み見るがそんな事なんか気づかずに俺に殴りかかる一歩手前



「なんでここで殴りかかるんでィ!」



すぐに受け身をとってダメージを減らすが何メートルか飛ばされた
チャイナの怒りはそれでおさまった様子はない



「卑猥アル」



「は?」



チャイナは自分の身体を大事そうに抱えるとぞわぞわと鳥肌をたてていた
なんか俺は変なことを言ったか?
…言った。言ったけど…そこまでか?



「お前ボンキュッボンの私のカラダ目当てアルなー!?」



何故か大変な誤解をうんでしまった
ワナワナと震えるチャイナにたぶん何を言っても無駄であろう



「ちっげーよバカチャイナー!!」



無駄あがきをしつつその誤解が解けるのはずっと先の未来にきっとあると信じるしかなかった



あと24ヶ月

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