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□嫌いと好きは紙一重
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きらいきらいきらい!
あんなやつきらい!
バタバタと廊下をかけていく私に周りは注目を集めていた
その後ろをのんびりとあくびしながら歩くあいつはいつも通り女子に囲まれていて
何かと構われている
どんなことをしてもどSな王子素敵!で片付けられる世の中は変だと不満にも思う
みんなと仲良くしたいと思ってたのにその願いはあいつによってぐちゃぐちゃにされたし…

沖田は基本私を女の子のように扱わない
それが最近になってコロッと豹変した
気持ち悪いくらいにニコリと笑ってなんでもしてくれる
お腹減ったと言えば弁当をあーんとかしてくれたり
重い資料やら本やらを職員室に運ぼうとしていたらキラキラスマイルで駆けつけて私の荷物を取り上げた
それだけなら無視できたけど…
今度は女子の前では私が彼女だと勘違いさせるような発言までしている
仲良くしたかったのにクラスは私を特別扱い
友達なんて他クラスにしか居ない



「チャーイナっ」



私がもんもんと考えてる中にひょっこりと後ろから覗き込まれる
それに気づいてから目をそらす
こいつのキラキラスマイルには慣れない
心臓が変な動きをする



「何考えてるんでィ?」



引いてる私に何も気にしないかのように肩まで組んできた
私はそれを振り払うが沖田は気にしないように今度は手を握ってくる
ビクッと一瞬飛び跳ねてから
手くらい、普通に友達とも繋ぐかとそのままにした



「お前のことアル。」



もう一度あのスマイルを作って私の顔を覗き込む



「俺のこと?…そんなに好きなのかィ?」



こいつの脳みそはおかしいようだ
全然違う意味だってのに!
フンっと風をたてるようにそっぽを向くが沖田は嬉しそうに笑うだけだった



「なんの嫌がらせアルカ?ほんっときらいアル!私の嫌がることなんでもするよナ!!」



そんな私に沖田はクスクスと笑った



「ばれちゃいやしたかィ?」



やはり嫌がらせのようだ
こいつは本当に策士だと思う
自分を犠牲にしてまで追い込みたいのか



「気持ち悪いアル!」



突き放した言い方になるけど、突き放すと言うより自己防衛に近い
ずっとこの調子でいられたら私の調子が狂ってしまう



「は?ときめかねぇの?」



えっと固まって沖田と見つめ合う
沖田は照れ臭そうに目をそらしたが私は本当にこいつは本物なのかと疑っていた
こいつに"ときめき"なんて言葉は全然似合わないとも思った



「ときめくって何にアルカ…?」



私の率直な質問に沖田は混乱しているらしくつないでいた手を離してまで頭を抱えている



「そっか。お前女じゃないから…」



「れっきとした乙女アル!!」



即座に突っ込む私に少々混乱しながらもブツブツと何かを話した

ん?何言ってるアルカ?

聞こえなくて今度は耳を傾けて手まで添えてやった
そんな私に沖田も顔を近づけて小声で呟く



「ギャップ萌えとかねぇの?」



ギャップ萌え?
うむ?

考え込んで友達との会話を思い出す
少女漫画であったのだ
メガネで堅物系の男の子が実は天然だったみたいなギャップが良いと語っていた
私にはよくわからないけど話を合わせたことをよく覚えてる



「お前のどこにギャップがあったアルカ?」



真面目なわけじゃないし、実は腹黒ではなく公表しているし
どこにもギャップなど見当たらなかった



「今までは意地悪だけだったけど最近俺紳士的な振る舞いしてただろィ?」



ううーんと考える
これはギャップなのか?
ギャップと言うより猫かぶり
なんだか良いギャップにも思えない
本性は知ってしまっている
本性に付け足したものを後に見せられても…なぁ…



「ギャップでは…ないアルな…」



沖田はなんだかショックな顔をして今までの頑張りは何だったんだと落ち込んでしまった



「ギャップって…どんなのなら良いんでィ?」



たぶんまたこいつはキャラを作る気だろう
なんて器用貧乏なんだ
新しいタイプなのかもしれない



「まずギャップ萌えってどこからの情報アルカー?」



こいつの周りにそんなこと言うのはゴリくらいだろうか
ゴリが言ったところで信用するか?いや、たぶんしないだろう
恋愛に関してはゴリ以外なら信用できるかもな…



「…雑誌」



小さくポツリと一瞬で落ちていった声に首をかしげる



「雑誌?」



聞き返す私にコクリと頷いてからなんとも言えない顔になってしまう沖田
私が沖田の言葉をずっと待っているもんだからやっと口が開かれた



「好きな女の子を落とす方法って雑誌に載ってた。できそうなのがこれだっただけでィ…。」



沖田のセリフにぶふっと吹き出すと沖田からけっこうヘビーな拳骨をくらった
私もそのまま頭突きを返してやったが
この感じが楽しい



「お前が雑誌になんか頼る方がギャップアル。」



バツの悪そうな顔は少しだけ幼い
昔から変わってない面影に、ここまで私たち成長しちゃったのかと痛感した



「好きになったかよ…?」



真っ赤にしながらもやっと放たれた言葉にまたクスリと一つ笑いをこぼしてから抱きしめてみる



「うん。雨粒くらいの小さい愛情なら芽生えたアル。」



抱きしめてあげたのにその手が私に回されない
こいつはほんっとヘタレなもんだ
私も今心臓がフル活動しているけど



「じゃあ、その愛情育ててやりまさァ。」



沖田もクスリと笑うとちゃんと私に手を回してきた
くだらないオヤジギャグみたいだけど私にとってはドキドキする言葉と変換されてしまいました

これからもっと好きになっちゃいますよ?



嫌いと好きは紙一重

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