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□こどもなめんな!
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太陽の光には浴びれないけど
太陽の匂いなら知ってるよ
貴方のことはあんまり知らないけど
私のことが好きなのは知ってるよ

もふもふと定春に抱きついて太陽の匂いを嗅いだ
犬特有の匂いと太陽の匂いはとてもとても絶妙で、ちょっぴり臭いけどくせになっちゃう

どこかきっとこの近くにあの人は居るだろう
探しになんか行かないけど
後できっとばったりと会ったりとかするんだ

最近の法則
一日に一回は喧嘩するの法則
時々守られない時はあるけど、だいたいこの法則は正しい



「定春そろそろ洗ってあげないとネ!」



「わん!」



定春がわかったみたいに返事するのが好きだ
なんだか嬉しくなっちゃうの

のんびりとしていたらいつのまにかあたりは真っ暗

そうだそろそろ秋だよ
少しだけ夜は秋の風が吹いてる
いつか空を見上げれば鱗雲がまた見える日が近くなってるんだね



「定春ー!帰るアルよー!」



私がぴょんっと起き上がるとそれに合わせるように定春の尻尾もぴょんっと跳ねた
そしてむくりと起き上がって一緒に帰り道を歩く
定春は友達であいつはそうじゃなくて…
なんだろう?

なんでも良いや



先を歩く銀ちゃんを見つけて飛び跳ねるようにかけ出せば足を踏み切り思いっきり銀ちゃんに抱きついた



「んああ?神楽か」



びっくりしたんだろうが魚が死んだ目は変わらない
銀ちゃんのちょっと独特な匂いも好きだよ?
ギュッと抱きついてぶら下がったまま引きずられてく



「今日も負けて帰ってきたアルカー?」



「うるせー!」



財布はきっと空っぽなんだろうな
でも軽い分私を持ったらあっためてあげちゃうよ?

ふふんっと笑って銀ちゃんから降りて隣りに並ぶ



「今日は沖田くんに会わなかったの?」



いつもは生傷だらけで帰ってくるのにそれがなかったせいだろう
それとも銀ちゃんはなんでもお見通しって?



「今日は定春とお昼寝だけアル!気持ち良かったネ!」



銀ちゃんはあーそーとだけ言って興味もないように歩いて行ってしまうけど、ほんとは気にしてるでしょ?
ほんと過保護なんだから

ねぇ、子供っぽいとか言うけど
子供だってちゃんと見てるよ?わかってるよ?
みんなが私のことどう思ってるのか、感じちゃうんだよ?
大人より敏感なんです!!!



「…最近寒くなってきたよな」



銀ちゃんは父親のような大きな手で優しく私の手を包んでくれる
いつもの銀ちゃんじゃないけど、
いつも銀ちゃんが誰かと手を繋ぎたがってること
知ってるの

家族の暖かみを私たちを通して見てるのを、知ってるよ



「秋アルなー。松茸ご飯食べたいアル!」



「はいはい。出汁とった後の椎茸でも食ってろ。」



そんなことを言うけど手は離されない
自分でも照れ臭かったりするのだろうか

クスクスと笑ってると銀ちゃんはパッと手を離し立ち止まった



「どうしたアルカ?」



見上げると銀ちゃんは黙って指を指す
その先を探せば見慣れた明るい髪色の少年が目に入る
こちらにはまだ気づいてない模様



「はやく帰って来いよ」



ポンっと背中を押されてから走り出す

ねえ、知ってるよ。
君が私を探してるって
ねぇ、君は知ってるかな?
私も君のこと好きだよ。



「ほあちょおおおおお!」



それを合図に二人の世界は始まるの



こどもなめんな!

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