SS3

□勘違いからはじめましょう
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高校生とはめんどくさいもので、今日も授業があるのに今日も恋は休めない
その恋の相手に伝えられない想いをずっと心に置いておかなければならない
捨てることはできない
授業になんか集中できないよ



「今のわかったアルカ?」



「わかんねぇなァ」



想いを寄せる彼とそんな会話をするまでも普通にこなしているが内心飛び跳ねるほど嬉しい
それを表さないのはけっこう大変なことなんだと思う



「ね。わかんないよネ。」



「お前わかる?」



私に投げかけられたと思っていたのだけど彼はその隣りに話しかけていた
大人しくて可愛い女の子
学年でも可愛いって噂されてる村上さん



「あ、うん。あのね…」



沖田に覗き込まれたその瞳はキラリと嬉しそうに輝き、頬はふんわりと赤色に染まった
とっても可愛くて、恋する女の子の顔
沖田のノートに図やら何やらを書きながら説明してくれていて沖田も心なしか嬉しそうな気がした



「へー。だそうだぜィ?」



今度は私と目が合う
今やっと自分は二人の世界の中にはいれたばかりな気がした



「お、おー。村上さんすげぇアルな」



全然わからない説明の図を覗き込みながら考えるのは沖田と村上さんの関係だけだ

こんなにあっさり話しかけちゃうんだし、それなりに仲が良いんだろうな

当たり前のように隣りに居る関係だったりするのだろうか
だったら、私だって当たり前のようにこいつと喧嘩してるけどな



「おい、今さっき答え教えてもらっといて間違ってんぞ」



隣りのサド野郎に消しゴムのカスを投げられて我に返る
乙女思考な私に腹立つ。もちろん消しゴムのカスとか投げてきたこいつも腹立つけど。



「お前、出席番号20番だろィ。当てられんぞ」



サド野郎に怒ろうと思ってたがそれを言われるとまともにやらなければ自分が大変なことになる

あの先生当てられた時答えられなかった子は放課後残らせてプリントをやらせるんだった



「でもわかんないアル…。」



図で見たって答えがどれかどころか問題の意味すらわからないよ
先生はそろそろ問題を書き終わって指名してくるんだ…絶対…!

焦りからか少し涙も出てきそう
放課後補習は嫌だぁ…!残ってまで勉強する必要性なんかわからないし…。



「ばっか。使う公式から違うぜィ?」



覗き込んだ距離は近くて毛先が揺れるたびにドキドキが爆発しそうになる
やっぱりわかんないし、全然集中できないよ



「だぁーっ…!俺もわかんねぇ…!これがこうだからこうなんじゃねぇ?」



いきなり顔をあげて目が合う
こんなんだっけ?て思っちゃうくらい近くて、ちゃんと目が開いてるのか心配になるくらい見れない

そんな私が変だったのかすぐに目を逸らされてしまう



「今日は20日か。じゃ、出席番号20番神楽さん。答えて」



とうとう私は席をたった
隣りの席のあいつはいきなり私のノートに何か書いたかと思えば強引に押し付けてくる

首をかしげながらも受け取って黒板の前に立つ
何度も消して書き直した図と計算式
その下には下手くそな字で「がんばれ」と書かれていた
その文字を読んでから振り返ると彼はわざとらしく窓の外を見ていた

嬉しかったのは嬉しかったのだけど、問題…さっぱりわかんない

ノートの図や計算式を参考に投げやりに書いてみたけどやはり間違っていて、私は居残りが決定した
席についたらボソリと隣りから「バカ」と言われた

ムカついて消しゴムをでかいまま全力で投げたらけっこう痛そうにしていた
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