SS3

□メビウス
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君の好きなところ
よく笑うところ
よく食べるところ
よく怒るところ
強いところ



「何見てるアルカ?」



せっかく見つけた彼女の隣りに座ってみたけれど
結局はそんなに触れ合うことも馴れ合うこともない
喧嘩ならするんだけど



「たまたまでィ」



こっちを見ていたチャイナの頬を片手で潰す
必然的に飛び出た唇を固定させてキスをしてみる



「たまたまじゃないダロ」



唇を離して、チャイナは変わらないけど俺は自分でやっといて心臓が壊れそうに動いてる



「うん。緊張した。」



深く息を吸って吐き出す
こんなのかっこ悪いよな
座り直してそばにあった木によっかかり、軽く頭をぶつける



「緊張だけアルカ…?」



四つん這いで這ってきたかと思えば俺の顔を下から覗き込む
不覚にも可愛いと思ってしまうそのいたずらっ子な顔
そんな君も好き



「ドキドキした」



素直な言葉しか吐けない
入り組んだ感情を飾って表に出すことなんかできない
ドキドキしてる。今も。
君を見つめてるから



「私も、ドキドキしてるアル」



クイッと上がる口角
持ち上げられたほっぺたが、可愛い
可愛いって、言ったら照れるだろうか
言った俺だけが照れてしまうのだろうか
どっちにしろ俺が殺されてしまうか



「好き」



「うん。」



つい出てしまう俺の言葉をそうやって受け止めてくれる君も好き
君の好きなところが溢れてる
少し笑うだけで少し目線が動いただけで好きなところが増えていく

誰かを好きになれる自分もいつのまにか好きになって
好きと発することがまた好きになって

君のおかげでたくさんの世界が好きになって

ありがとうも、大好きも、愛してるも、
全然足りないんだよ



「好きだよ」



「うん」



しつこいとか、うるさいとか、いつもだったら言うくせに
この言葉だったら言わない君にはにかむ

好きだよと永遠に繰り返そうか

それはメビウスの輪みたいに終わらない
君が好き



メビウス



「好きって言ってやるから酢こんぶ買って来いヨ」



「まじでか」

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