SS3

□そこに居る君
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久々に2人で出掛けた
いつも忙しかったし、会う事も少なかったし
まあ、2人とも命がけな仕事してるし上がりの時間になっても仕事が片付いてなかったら終われない
上がりの時間に舞い込んでくる時さえある



「ここのケーキうまいアルなー!」



久々のデートらしきもの
来たのはバイキング
もちろん私が誘って私が行きたいところを決めた
あいつが決めること、誘うことなんてないに等しい



「悪くねぇな」



2人で居ても笑うことは少ない
笑ってるところを見てたらいきなり真顔に戻ったりする
それはちょっと嫌なことで面白いことだった



「新しいのとってくるアル!」



お皿を持ってまたケーキのところで何を取るか選んでいると
女子たちの声が聞こえて来た



「ねぇ、あの人かっこ良くない?」



「やばーい!彼女ときてるっぽいけど…!かっこいいね!」



女子たちだけで来てるのだろう
女子トークが炸裂して居た
目線の先にはやっぱり沖田で

モテるよなー
中身酷いけど…

みんなの知らない沖田を知ってて優越感に浸ってしまう

周りから見たら彼女に見えちゃうものかー

いつも私ばっかり沖田が好きオーラが出てて、彼女に見られることなんてないだろうと思ってた
よくても仲良い異性の友達同士に見られてるだろうと予想していた

手、つなぐ事もないし

そんな事を考えつつも手はテキパキと自分の好きなケーキを盛っている
盛り方は汚いけど



「何それ、食い物?」



席に戻ると早速沖田からのいやーなダメ出しが入ってくる
別に嫌いではないけど、いやーな感じなのだ



「全部ケーキアル!」



フォークで上の方からちょっとずつ消化していく
昔よりかは綺麗に食べれるようになっても盛り方はてんでうまくならなかった
それでも全部綺麗に食べるから最終的には綺麗な皿だけ残るわけだ
気にすることはない



「俺もう食えねェわ。」



デザートのケーキを食べ終えてからフォークを置いた
その様子を見つつも私はまだまだ口の中に放り込んでいた



「これだけとか…軟弱者アルな」



「お前が食い過ぎなんでィ」



すかさずツッコミが入ったが緊張してしまった私はケーキを頬張りすぎて返事ができない
まあ良いかと横を向けば恋人同士が手を繋いで歩くのがバイキングの綺麗で透明な大きな窓から見えて憧れを抱きながら眺めていた



「おい、お前口ついてんぞ」



沖田に話しかけられてから急いでナプキンをとって口をふく
心はやっぱり乙女なもので少しだけ恥ずかしい



「ちげぇ…逆。」



そんなこと言うならとってくれたら良いのに
また逆をふいたらうん。とだけ言って沖田も窓を眺めていた

彼氏がそう言ってチューしてくれるとかふいてくれるとか
憧れるけどこいつは無理だよな

わかっているだけに虚しい



「えっと…エイリアンハンターって大変なんだヨ!最近出たエイリアンがさぁ…」



話しをもたせようと話し始めるが沖田がこっちを向くことはなく、窓を眺めて少しだけ口角をあげたのが見えた

何見てんだろ…?

どうせ聞いてないだろうし、私はそんな沖田を眺めてても良いだろうか



「何でィ?途中で止んなィ。」



向き直ってしまう沖田と目が合って
見てたことばれたかなと真っ赤になってしまう



「なんでもないアル!」



すぐに目をそらして下向きがちにケーキを頬張っていく

絶対変なのって思われたよなぁ…

何も言えずにうつむいていると沖田も何も言わないから少しだけ顔をあげる

窓の外を見ながら何故か赤くなってる沖田にドキドキして
もう心臓壊れそう
いつのまにかポロって落ちちゃうかも



「ど、どうしたアルカ?」



「なんでもねェよ」



こんなにドキドキしちゃうのはずっと会ってなかったせいだろうか
好きだからってだけなのだろうか

沖田が私のこと好きじゃないとか、そんなんでも別に良かった。ただそばに居れたら
でも、そんな顔にさせる誰かが沖田には居るなら
そんな沖田を見ていたいなら、もしかしたら居ない方が良いのかもなぁ



「沖田」



そばで笑ってる誰かが違ったら、沖田はその笑顔にさっきのような顔するんだろうか

そんな顔してる沖田ってすごく好きだなぁ
見てたいなぁ

すごく、すごく、好きだなぁ



「変な顔してどうしたんでィ」



少し顔を隠しながらも目はちゃんと合わせてくれる
そらしたくなるくらい、沖田の目って綺麗だ



「何に笑ったアルカ?」



今さっきの笑顔がまた見たいよ
どうやったらまたそうやって笑うの?
わたしの心臓が爆発しそうなくらいのその顔は誰を見てるの?

君の先が気になるよ



「わらっ…?え…?笑ってたかィ?」



無意識で笑っちゃうなんて、沖田らしくないな。
いつも計算通りで表情まで変えるくせに
でも、すごくいい表情だった
また、見たいの



「今さっき、窓の外見ながら笑ってたアル。」



「まじでか…。」



また赤くなっていく顔
写メにとっときたいくらい、可愛い顔してる
私は見惚れてしまうよ

誰を想ってその表情になるの?



「沖田の好きな人って誰アルカ?」



顔を背けながら頭をかく
けっこう痛いとこついてしまったようだ



「それ…ここで言わなきゃダメなのかねィ?」



ケーキの皿を平らげてからフォークを置く
そんなに言うの恥ずかしいのか?
お前は女子か!

私より女子力高いんだろうが…



「場所移動するアルカ?」



「そうじゃねェ!!」



大きい声だったもんだからバイキングの高い天井のせいか反響がまたすごく、一瞬バイキング全体でみんな静かになった

自分でもびっくりしたようでうわーっと頭を抱える沖田にびっくりしてしまう
こんな余裕のない沖田は見たことない

そしてゆっくりと沖田は私を指さした
顔は真っ赤で私の方なんて見ていない



「…何アルカ?」



今さっきのことで私は意識して小さな声でしゃべる
沖田も意識しているのか声が小さくてなに言っているのかなんてわからない



「………っ…まぇ…」



首を傾げてしまうが沖田には見えて居ないだろう



「何言ってるアルカ?」



そんな私とやっと目が合うが沖田は耳たぶまで真っ赤っかだ
これはたぶん足の先まで真っ赤じゃなかろうか



「…だから、俺の好きな奴!」



その指先を辿ってつい後ろを振り向く
その先には何故か尾行してきたような銀ちゃんとマヨラーが居る



「え?銀ちゃん?」



「っ…!ちげぇ!」



そうなるとマヨラーしか居ないんだけど、そうなのだろうか?
これは空気を読んでわかったと言うべきだろうか…?



「土方こんちくしょーなわけねぇだろ!!」



私の表情で何を思ってるのかわかったらしく口にする前に先回りされた



「え…じゃあ、誰だヨ?」



周りを見ても知ってる人は居ないし、
もしかして沖田の知っている人で私は知らない人なのか?

また指の先をずっと探してしまう



「鈍感!馬鹿!アホ!まぬけ!そんなんだからダメなんでィ!!」



謎のダメ出しに
お、おう。
とか返事をしつつも動揺は隠せない

何が言いたいんだろうか?



「っはー。…だから…お前だよっ……!」



そう言って頭を抱えて沈んでいく沖田を某然と眺めてしまった

お前って…私か…。

え!?
私か!!?え!?

混乱していく頭の中で困ってる



「ほんとに…私…なのカヨ…?」



うんっと小さく頷いたかと思えば
死にてぇっとまた沈んでいく

沖田は私のこと想って笑ったの?
じゃああの時あの先に誰かが居たんじゃなくて、そこに私が居て…私が話したから笑ったの…?
それであってるの…?

顔が真っ赤になったのも…あの可愛い顔も…全部、私なの…?



「し…死にそうアル」



死にてぇ死にてぇと嘆く沖田が顔をやっとあげて目が合う
心臓が飛び出るよ…これ…スプラッタだよ…?



「バカ。」



クスクス笑う沖田が変で
好きで
好きで

もうわかんない

好き



「私も、好きアルヨ」



溢れた想いが言葉になって溢れ出してる
身体から、心から、

想うのは君のこと

ずっと前も、ずっと先も


そこに居る君



「「なんで尾行なんてしたんだろう」」

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