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□視線の先に
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クスリと笑った
今日もあいつが俺を見つける前に俺があいつを見つける
あいつはやっぱり隣りの気だるそうに歩く死んだ魚の目をした男ばかりを見てる

さて、何をしてやろうか
気づかれないのならその分何かする他に道はない

とりあえず一発バズーカ?今なんか食べ物持ってただろうか?持ってたらタバスコだな
ゴソゴソと漁ってみるが特に見つからない
これは普通に挨拶して嫌味を言うに限るかな



「今日もパチンコかなんかですかィ?」



旦那に話しかけるとやっと俺に気づいたようで死んだ魚の目が俺をとらえた



「ん、ああ。総一郎くん。そっちは?サボり?」



「いやぁ、どっかのバカな天人と天パとメガネがいろいろやらかして上司にこき使われて大変なんでさァ。」



チクリと嫌味を言ってやったつもりが微動だにしない
そんな人だとはわかっているけどムカつくもんだ



「あーそ。大変だねー。」



なんて言い返してやろうか
なんて言ってこいつ罵ろうか
頭の中はそれでいっぱいになっている



「そっちも大変ですねィ?今日の仕事は豚の散歩ですかィ?」



「おい誰が豚ネ」



やっぱりこいつは簡単にひっかかってくれる
作戦通りすぎてニヤリと笑った
見下すようにそのイヤーな笑い方でチャイナを見据えた



「自分の事ってよくわかったねィ。褒めてやらァ。」



こいつは何を言っても言い返してきてなんだか気分が良いもんだ
うまく掌で転がしてる感覚

そうやって騒ぎ出す俺たちを見向きもせずに旦那は歩いてく



「あ!銀ちゃん待つアル!」



こいつはそうやって旦那について行くんだ
それが親子のような関係だとしても、俺を見てくれないチャイナに少し寂しさを覚える

じーっと後ろ姿から目が離せない
するとそれに気づいたかのようにチャイナが振り返った

俺と目が合えば憎たらしい顔であっかんべーをされる
そうしたかと思えばまた旦那の後ろを追いかけて行った

別にそれだけでも良い
彼女が彼しか見ないのなら
君の中に俺が居ないのなら

割って入るまでだ

チャイナの方から向き直って
次はなんてからかおうかと頭を悩ませるのだった



視線の先に

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