SS3

□誰か晩御飯作って
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バタンと乱暴に開ける音が旦那の帰りを知らせる
ドタドタと歩く音に、回れ右をして仕事場に帰ることを無情にも願いつつドアの方向を見つめて居た

その願いは叶う事なくドアが開く



「おかえりアル」



「ただいま…。」



テーブルにうつ伏せの状態で顔だけあげる
目が合うととても冷たい視線を送られた



「また、何も食べてないのかィ?」



神楽は沖田から一回目をそらしてからちょっと言いづらいとも思いつつお腹の音が容赦なく鳴り響く



「そうなんデスヨ。」



これは一緒に住み始めてから毎日続いて居た
朝ごはんはだいたい旦那に作ってもらい昼は何もせずにだいたい寝ているか銀ちゃんとゴロゴロするか

ニート生活と言うものである

コンビニにすら行くのがめんどくさい



「嫁が居るのに家事やってる俺ってどうなんだろうねィ…。」



最近叱るでも怒るでもなく飽きれてきている旦那である沖田に心の中で謝った

結婚したら頑張るとか
ニートの明日から頑張る
明日から本気出すとなんら代わりがない事を痛感した



「洗濯機回してる間、なんか食い行くか」



「焼き肉が良いアルー!」



飛び跳ねる私にため息をつかれたが…まあ、良いのだ
仕方が無いのだ。自分が家事を何もしてないから。



「じゃ…てめぇはサラダバーオンリーな。」



とても素敵な黒い笑顔をする旦那の腹を全力で殴りにかかるが腕をつかまれた

間近でニッコリ笑われると思ったよりこわいもんだ



「さ…サラダなめんなヨ。野菜たけぇんだからナ…!」



腕をパッと離して隊服を脱ぎ出す
ハーっと長いため息と共にクローゼットの方へと消えて行った

そろそろ家事とか、できるようにならなければ…いつか相手にもされなくなりそうだ



「そーご…、今日なんか料理してみようカナ…?」



あとを追って壁からちょこっとだけ頭を出して旦那を見つめるとまだまだ着替えてる最中



「なんかって…具体的にはなんでィ?」



振り向かずに答えるので私も目をそらしてから考える

あれは難しいしこれは絶対作れないしと悩んでできるモノあれだけだ…と気づく



「卵かけご飯」



「それは料理とは言い難いねィ。」



うう。と唸ってから冷蔵庫を開く
卵はきらしているようだ
残り物で作れるモノなんて何も浮かばない

静かに後ろから腕を回された



「おっぱい小さくなってね?」



どうやら着替え終わったらしく私を後ろから抱きしめてきた

上を見上げるとちょうど目が合う

腕は胸の下あたりに回していて、腕に胸が少しだけのっていた



「痩せたと言うアル!」



ふーんと適当に流して総悟も冷蔵庫の中身を確認する
あまりにも中に何も入ってなくて買い物くらい行けと怒られるかなーっと内心びくびく



「焼き肉行くか。めんどくせーし。」



手がそろりと抜けていったので冷蔵庫をしめて総悟の方を振り向く
と仏頂面で手を差し出された
わけがわからずとりあえず握手



「…なんでそうなるんでィ。」



その手を離せば今度は無理矢理ギュッと握られて恋人繋ぎにかえられる
いつもはしないような大胆な行動にドキドキしてしまう



「さ…サラダバーなくなるまで食ってやるアル!」



ドキドキも吹っ飛ぶような大きな声で宣言する私を無視してずるずると引っ張られて玄関まで辿り着いた
靴に履き替えて外に出ると総悟が鍵をしめてまた手を差し出してきたので今度は間違わずに指を絡ませた



「サラダバー平らげるのは良いけどちゃんと肉も食えよなァ。」



「え!?いいアルか!?」



喜んで隣りを見上げると少し頬を赤く染めた総悟が逆の手で私の視界を覆ってしまった



「最近痩せすぎでィ」



これは照れ隠しのようだ
それくらい普通に言えばいいのに。
でもそんな事を心配してくれるのも嬉しい



「大丈夫アル!ちょっと痩せただけで健康体ネ!」



心配させまいと振る舞えば手は視界を遮る手は離れて行ったがこっちを向いてくれない
んー?っと覗き込んでも逆方向の空を眺めていた



「せっかくちっぱいをおっぱいまで育ててやったのに、戻っちまったらどうするんでィ」



握っている手に力が入ってくる
やっぱりこいつは変わらずにムカつくところがある…!



「…お前になんか育てられてねぇアル!私が元々ナイスバディになる予定だっただけネ!!」



その後2人はごちゃごちゃともめつつも仲良く焼き肉屋さんのサラダバーを全て完食したのでした



誰か晩御飯作って

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