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□最後の夏休み
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夏が終わる
結局夏休みの間、補習以外で会うことはなかった

少しだけ寂しい

今年で高校最後の夏休み
進学しない私には、本当に最後の夏休み



「海とかプールとか…行きたかったアル…。」



結局は補習ばかりで過ごしてしまった
課題は卒業年次と言う事で試験勉強もしなければいけない人がいる
そのため少なめに出ていたのだが難しい問題ばかりでなかなか苦戦した
まだ終わってないものさえもある

机に向かってみるけど、やっぱりやる気なんか出てこない

ブブブっと机の端に置いていた携帯がなる

どうせあいつのアドなんか聞いてないし、知らないだろうし

メールボックスを開くと登録されてないアドレス
ドキドキしながら内容をのぞき見る



"だーれだ"



ん?と首をかしげて、あいつ…じゃないよな
あいつだったらいいのに、なんて思いを馳せる
でももしあいつで、すぐにあいつの名前を出したらなんだか恥ずかしい

あいつのことばかり考えてると思われちゃう



"しるか"



いつもなら絵文字や顔文字を乱用するが今日はあえて何もつけない
心の中で期待してる
あいつなんじゃないかって
返事はすぐに帰ってきて笑ってしまう



"これだからバカチャイナは…"



そんな事言うのってあいつくらいでしょ
とっしーもゴリラも、そんな事言わないよ?
やっぱりあいつだよな
なんて答えよう?
とぼけるか、それとも答えるか
無視してしまおうか

いきなり携帯が震え出した。
知らない番号…これも、あいつからだろうか?

心臓が暴走してる。痛いくらい激しい鼓動。
深呼吸をして、はやく取らなければと思いボタンを押してゆっくり耳にあてた



「…もしもし?」



しばらくの沈黙
いたずら電話だろうか
それならなんか文句を言ってきってやりたい
あのときめきを返せ!
心臓が動き過ぎて寿命が縮んだ!絶対!

文句を考えていると、やっと相手がしゃべった



「…チャイナ?」



その声はまさしくあいつの声
電話だからいつもとちょっと違うように聞こえるけど、あいつだ
また心臓が大きく動き出す



「そう、だけど…。なんだヨ」



顔を合わせてないからか、なにをしゃべっていいかわからない。
恥ずかしいような気がするし、もう片方の手は何かをしてないと落ち着かない
平然を装いつつベッドの上の大きなウサギのぬいぐるみをぎゅっと握りしめた



「…あー…っと…。課題とか、終わらせたかィ?」



どうやらあいつも気まずいようだ
平然を装ってるのは私だけじゃないみたい
言葉を選んでる感じ



「終わってるわけねーダロ…」



「俺は終わった。」



今度の言葉ははやかった
これはたぶん…嫌味を言うために私の電話番号とメールアドレス入手したな…?



「じゃ、じゃあ写させろヨ!」



課題は終わりそうにない
自由研究とか、どうでも良い事はしたけどたくさんのドリルやらワークやらは全然はかどらなかった
わかる気がしなかった



「お前が…俺ん家まで来たら考えてやらァ。」



よく考えた誘い文句だ

行くと即答して電話をきりワークやドリルをカバンに詰めながら頬がゆるむ

最後の夏休み…最後の日に…最高の夏になる予感



最後の夏休み



「ここ、確実に間違えてるアル」



「うるせぇー。写させてもらってる分際で文句垂れんな」

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