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□帰国子女
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ドンっとぶつかった衝撃によろめいた
ぶつかったモノは何も言わずに俺の横をすり抜けていく



「いって。何でィあれ?」



隣りに居た友達に首を傾げると友達は複雑そうな顔をする
ん?っと首を傾げれば俺の耳に近づいて小さく耳打ちした



「帰国子女らしいんだけど、愛想もないし性格最悪なんだって」



「ふーん」



あまり自分には関係ないことなので適当に受け流していた

昼休みになり教室を出ればまたドンっと勢いよくぶつかってきた
そのモノを見れば朝と同じ奴



「おい、てめぇ二回目だぜィ?ちゃんと周り見ろよなァ。」



「はあ!?お前が飛び出してきただけアル!あっ…だけ、だろ!」




そう言い終わる前くらいにまたバタバタと廊下を走って行った



「神楽ー!廊下はしんなー!」



今度は銀八にぶつかった
一応教師だが睨みあげると軽く笑われた



「総一郎くんさ、ちょっと神楽と遊んでやってよ」



ぶつかってきたくせに謝りもせずいきなり会話をはじめてきたため悪い印象しか受けない
最初から良い印象なかったし



「なんで、俺なんですかィ?」



「似たような人種だから」



俺が何か反論しようとする前にぽんぽんと頭を叩かれさっさと消えた
子ども扱いまでされてなんで律儀に言われたことをしなければならないのだと思ったが
あの女が少しだけ気になった



「こんなとこでご飯ですかィ?」



彼女を誰も行かない旧校舎の裏で見つけた
俺は、何時の間にか彼女を探しててやっと彼女が旧校舎の裏でご飯を食べてるところを発見したのだった

たくさん口の中に頬張ってる彼女はむっと変な声を出しながら俺を睨んでくる



「そのメガネ度強そうだねィ」



はじめてまじまじと見る彼女の顔は
あまりにも幼くてそれでいて可愛かった

彼女はんぐんぐと食べたモノを飲み込みお茶を流し込む



「このメガネ、兄貴がかけとけって言うからかけてるケド、むしろ何も見えないアル…。あ、見えないデス…?」



ああ、だから睨んでるように見えたりぶつかったりするのかと納得
あと、日本語も下手くそ?
なんでアルアル言ってるんだ?



「アルって何でィ?」



「訛り、みたいなのア…ル。」



中国からだろうか。でも実際にアルアル言ってる人はじめて見たなと内心びっくり



「へー、別良いんじゃね?隠さなくったって。」



「だって、変アルよ」



しょぼんと落ち込んだようにうつむいてしまう
なんだか可愛く思えて頭をぐしゃぐしゃに撫で回した



「何するアルカー!!」



「つい、ねィ。」



また頭を整えなきゃーと嘆く彼女をなんと呼ぼうかなと悩む
今日知り合ったばっかりだし



「チャイナ娘」



しばらく無視をされたがそれでも見続けると自分の事だと気づいたらしく俺の方を見た



「は!?何アルカそれ!」



「アルアル言ってても良いんじゃね?じゃーな。」



それだけ言い残して教室に戻った
何事もなく次の日になれば昨日と同じ友達が興奮したように話しかけてきた



「あの子、神楽さんね!めっちゃ明るくて面白いよー!」



昨日と全然違う評価に、人間関係のめんどくささを覚えながら
心のどこかがホッとした



「あ!沖田くん!」



「今回は間違えやせんでしたねィ」



けだるそうにいつも俺の名前を間違える教師、銀八がやってきた
その目は死んでいるが口元は上がっていて笑っている



「神楽のことかまってくれてありがとうね。」



そう言った時だった
どさっとまた何かにぶつかった
下を見るとまたチャイナ
二度あることは三度あるって本当なんだなと思っていると、彼女はレンズの奥の瞳に涙をためていた



「お前は、先生に頼まれたから私の相手してくれたアルか…!?」



それだけ言って走り出してしまうチャイナに呆気に取られたが走って追いかける

勘違いしてる

いや、本当のことなんだけど

少し違うんだ

君への気持ち



屋上まで上がって
ピタリとチャイナが止まった



「取り乱して、悪かったアル」



目の涙をふいて
彼女は俺と向き合ってる
泣かせたのはきっと俺。
勘違いからはじまったことでも、それは事実なんだ



「でも、嬉しかった。わかってるよって、大丈夫だよって、言ってくれた気がしたアル。
そのままで良いんだよ!って!言ってくれた気がしたアル!
お前が、どんな気持ちでどんな理由で近づいてきたのかわからない
けど、とっても嬉しかった。とっても心強かった。
私の背中を優しく押してくれた!
だから、今学校が少しだけ楽しくなってきてるアル!
だから、だから、ありがとうネ!!!」



たくさんの言葉を身体から出せば
力を使い切ったようでぺたりと座り込む
まあ、あんなに長い話をすれば、なぁ…。



「俺の話も聞いてくれるかィ?」



うん  も  ううん  言われてしまう前に彼女の目の前まで歩いた

涙を拭いながら俺の顔を見つめる



「確かに銀八に言われたんでィ。話してみろって。
でもな、俺は俺の意思でお前を探してお前に話しかけたんでィ。
お前と話した言葉だって、俺がそう思ったから話したんでィ。
誰に言われたからでもねェよ。」



泣きじゃくる彼女をまたぐしゃぐしゃに撫で回す
泣きながらも笑って怒ってる
感情がいっぱいいっぱいで、何がなんだかわからないらしい



「お前、良い奴アルか?」



「それはこれから知ってってくだせェ。」



クスクスと二人で笑いあう
昨日知り合ったばかりなのに
出会いは最悪だったのに



「お前って」



「沖田総悟でィ。チャイナ娘。」



何を言うのかすぐにわかってしまう
似てるっていうか、なんとなくわかる感じ



「このままサボるかー。」



「私もー。」



その後こってり銀八に怒られたのは言うまでもない



帰国子女

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