SS3

□泣き顔
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「先輩」



じりじりと詰め寄ってくる神楽に気づいていたが気づかないふりを決めこむ沖田
神楽もそろそろ自分の方を向かない事に疲れてきていた



「また無視デスカ」



見ていた雑誌をぺらりとめくり、神楽の方など見る気もないようで
ピキピキと手を震わせながら神楽はもっと近くに寄っていく



「無視、かもねィ。」



曖昧な言葉にイライラとしながら
今日こそはちゃんと話しをしてみようと神楽は負けずに近寄った

付き合い始めたのは確かにこいつからの告白だったはずなのに
イチャイチャなどなにもせずに時間だけがたち、こんな関係もあまり意味がないような状況

今日も、この調子なら…別れた方が辛くないアル…。

新しい恋ができるのかなんてわからないけど
先輩をずっとみとくのは、片想いの時より両想いの時の方がつらいんだとわかった



「せっかく学年違うのにわざわざ来てやったんですけど、無視なんデスカ?」



「それは愛の力って奴でさァ」



「意味わかんねぇアル。」



チラリとこっちを見たかと思えば興味なさげにまた雑誌に顔を戻す

好きじゃないのかヨ
だったらなんで告ってきたアルカ!?

問い詰めたいけど、わかんなくなる
たくさんの言葉に涙が押されて溢れそうになる



「ここで泣くなよ」



「あっそ!」



涙目で、もう涙がこぼれそうになってから
さっさと教室を抜け出す
周りはこの修羅場に黙りこくっていたが、私が動くと時も流れ始めたように動き始めた

泣き虫なのはかっこわるいし、誰にも見られたくない
私だってそうだけど、そんなに嫌そうに言われたら涙だって溢れ出ちゃうよ

誰もこないような端の階段を曲がると
蛇口をひねったように涙と鼻水の嵐
何も言えなかった自分が悔しくて、好きの気持ちがつらくて
こんな自分も嫌でめんどくさくて
はやく、解放してほしい



「やっぱ、泣いてるとこ可愛い。」



顔をあげたら先輩が目の前に居て、急いで顔を隠す
その隠した手を無理矢理開かせて先輩は覗き込んでくる



「思ったよりはやく泣いたねィ」



「今さっきから何言ってるアルカ!?」



隠せてないぐちゃぐちゃの顔で思いっきり叫ぶと鼻水がだらりとまたたれていく
それをもろともせず先輩は手で拭った



「ほんっと、泣かせたくて仕方なかったんでさァ。」



わけがわからずとも涙は溢れ出るもので
掴まれた腕の力は抜けて涙はポロポロと出し続けていた



「先輩、私の事好きなんデスカ?」



「変な質問だねィ。嫌いな女の鼻水手でふける奴ァいねぇだろ。」



それって好きって言ってるんじゃん
わかった意味がまた涙を生んで止まらない
こんなの私らしくないのに
恋したらわかんなくなっちゃう



「好きアル」



「ん。だから、他人にその可愛い顔見せんなよな。」



はっ?と首をかしげるが
しばらく考えてこいつどSすぎてただのゲスだった事を思い出す
泣かせたかっただけなのか!?それだけのためにあんなに無視し続けたのか!?



「先輩ってバカなんデスカ!?」



「バカでけっこうでィ。それより…」



そろそろとまりかけの涙の顔で首を傾げると
ちゅっとリップ音をたてながらキスがふってきた



「総悟って、呼んでくんねぇの?」



泣き顔



「…嫌アル」



「え!?」

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