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□夜空の下で
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隣りに手をのばしてみる
届きはしないし、届かせようとも思ってない
ただ単に
昔とは少しだけ違う関係で隣りに座れてるのは
少しの切なさと絶大な幸福感

ねぇ、今隣りに居るのは君だよ。

隣りを見て星を眺めてる沖田の横顔に口の端が緩む
私は沖田が好きだってわかってる
喧嘩してばっかりの時間が楽しくて胸がジクジクと痛んで
病気みたいに沖田が笑うだけで心臓の場所がわかっちゃうくらいにトクントクンと騒ぎ出すの
大嫌いで、好きで、そばに居ると幸せで切ない

あと一センチのばしたら届いちゃう

ドキドキした後に下を向く
手はのばさない

その人は人間で地球人で私より簡単に死んでしまうような人で
その人が、私を好きになる事なんてないと思った

『ない』と言うより『あってはいけない』気がした

だって私、天人だもん

江戸を無理矢理開国させて勝手に入ってきた生き物
外国人だったら良かったのかな?
でも私は天人なんて括りの中に入っちゃう

好きって想うだけ

喧嘩トモダチに過ぎなくて良い
それ以上を求めない
好きって想うのもダメなんて言うのなら、ずっと隠すから

トモダチの枠に入れさせて



「もう帰るかィ?そろそろ旦那に俺が怒られらァ。」



「はは、怒られちゃえヨ」



いきなり振り向くもんだから
私は心の準備なんかできてない
心臓、口から出すぞ
グロい事マジですんぞ

心の奥底でギャグっぽく自分を慰めた



「帰りたくねーなら話は別だけどねィ?」



「…。」



「なんでィ…。そんな顔すんな。」



沖田は鈍感すぎるよ
どんなに舞い上がったかわかってないくせに
帰りたくなくなるじゃん
ずっと隣りに居られる気がしちゃうじゃないか

手をもっとのばしたくなる

好きって伝えたくなるわかってほしくなる答えてほしくなる
そんな事したら今の関係が壊れてしまう
もう顔も合わせられなくなるかもしれないのに
恋愛なんかした事ないから何もかもわかんないのに
ドラマみたいにうまくいくんじゃないかって
どんどん貪欲になっちゃうよ



「帰ろっか…。」



「チャイナは、帰りたいかィ?」



「私は…」



複雑に笑って
帰りたいヨって言うのか
帰りたくないヨって言うのか
頭の中もいっぱいいっぱい気持ちの整理もいっぱいいっぱい

どの答えが正解デスカ?



「かえ「俺は今、お前を帰したくない」



顔を少しだけ腕で隠してるけど照れてるのは一目瞭然

今、手をのばしたらとってくれるだろうか

ちょっぴり、本当にほんのちょっとだけ
沖田も同じ気持ちなんじゃないかって思っちゃうよ?
私の頭の中、今正常にまわれてないよ
いつもより全然何も考えられないよ
そこにある感情ばかり溢れてくるよ



「帰るアル」



「は?」



沖田の目の中に私が映ってる
見えないけどたぶん、この満点の星空と一緒に、今もう1人の私が沖田の目の中に居る

教えてよ。答え。

ずっとこの距離なんだと思った
目の中の私が見えないくらいの距離。
見えないから私は答えが出ないんだと思う。
見えたら私はもう1人の私と相談する。
私が2人でもっと混乱するのかな?
それでも答えが見つかる気がするんだよ。
君の中に、私の答えがあるんだよ。



「やっぱり、もっと、近くに行きたいアル」



「じゃあ、来れば?」



手と手が触れ合って
体温がわかっちゃうくらいの距離

好きになってくれなくて良い

今が幸せだから、

良いの


夜空の下で

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