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□夢まで魅せて
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俺は悪夢を見る
毎日続くその夢を俺は覚えていない

ぼんやりと覚えているのは真っ暗な世界だけ
そこに居た俺はひとりぼっちだったのか、誰か居たのか…わからない。



「起きたアルカ?」



目を覚ましアイマスクを外すとそこは何故か万事屋のソファーだった
まだ寝ぼけているのだろうかと思ったが、チャイナの隣りに居る土方このヤローに気づき惚けた頭はすぐに覚醒した



「総悟、大丈夫か!?起こしてやろうかと思ったけど、そんなに唸るなら見せてみろって言われてなぁ…!怖かっただろ?」



目が覚めると確かにあまり良い気分ではなく目が覚めたのだが、近藤さんが大人気なくボロボロ泣いてるから
自分の怖かったことなどどうでもよくってしまう



「え?」



まあ、近藤さんも年だから涙腺が脆くなってるんだろう
ただこの状況を掴むのは難しい
そんな俺を察してか土方さんはタバコをポケット灰皿で消した



「最近お前の唸り声がうるせェって隊舎で有名でな、近藤さんと俺でお前が寝付いてから張ってたんだが、すげェ唸ってた。」



そこまで説明すると泣いていた近藤さんも落ち着いたらしく
土方さんもまた新しいタバコに火を付ける



「いろいろ試したんだけどな、寝てる時の方がいろいろと凶暴だったもんで、万事屋に相談したってところなんだよ」



近藤さんが付け足しの説明をし終わったところで俺には納得がいかない
それのために何故俺は万事屋のソファー何ぞと言う布団よりも硬いもので寝かされたのだろうか
なんなら寝ているところに来いよ
それも嫌なことには変わりないけど



「万事屋って言ってもそれって守備範囲内なんですかィ?」



硬いソファーから起き上がり足を組んだ先にイチゴ牛乳を片手にジャンプを読む旦那を見つめた
いつも通りに目は死んだ魚の目だ



「そうだよねー、万事屋って言ってもそこまでできるわけないよねー。こいつら頭おかしいんじゃねぇの?」



「そう言わずになんとかしてくれよー。万事屋だろ?」



泣きつく近藤さんをめんどくさそうに振り払うとジャンプのページをめくった
俺も同感なんだが、そこまで言うほどに暴れる夢ってどんなのだったんだろう?
全然覚えてない



「あれじゃない?枕の下にエロ本を置いてだな」



絶対きかなそうな解決方法を編み出す旦那をメガネが突っ込んでいたがどうでもよすぎて聞いてなかった
組んでいた足を組み換えながら目の前のソファーの上で体育座りのチャイナと目が合う



「何ガンつけてんでィ」



「あ?お前が先に睨んできたんだロ」



今にも喧嘩しそうな雰囲気に土方さんがピクリと眉を動かした
たぶんこれ怒るんだろうと予測して立ち上がった



「俺どっかの酢こんぶかじることしかできねェようなアル中と違って忙しいんで、これで失礼しやす」



見回りの時間なんで、と適当に付け加えて外に出ると後ろから罵声が聞こえたが無視した

パトカーでここまで連れてきたのか?そんなことしてて良いのか?と少し引いたが俺にはそう関係ないので気にしないことにしていつものように耳にイヤフォンを装着

流れてくる落語を頭の中で一緒に暗唱しながら歩いた

そこで後ろから小さな足音がついてきていることに気づきながらも気づかないふりをして曲がり角を曲がって待ち伏せた



「うわっ」



「こっちが"うわっ"でィ。なんだよアル中。」



傘がぶつかりそうになって片手で止める
今さっきと同様に俺を睨みつけると小さく舌打ちをした



「悪夢の原因、日常生活にあるかもしれないだロ。ちょっとした調査アルよ。」



ふーん、と興味がないような顔をしてそこから近いサボり場まで足を進めることにした
それを一定の距離で追いかけてくる足音に耳を澄ました



「お前、また寝るアルカ!?」



日がちょうど良いくらいに当たる木の下に寝転ぶ俺を覗き込む少女
髪がもう少しで当たってしまいそうな距離
近すぎる

いつも見てるのに、近過ぎることにびっくりしたのか心臓がなんだか痛い



「これが日課なんでねィ」



頭の後ろに回してまくら代りにしていた手を伸ばすと簡単に頬に触れた
だがチャイナが逃げるように顔を離したからその手でちゃんと触れることはできなかった



「ちょいここで寝てみ?」



起き上がって自分より少し距離をとった隣りを指差すと
チャイナは疑いながらもそこに座った
日陰になっているそこでは傘も不要で日の当たる場所で見る肌は白すぎるほどに白い

あー、変なこと考えそうになった

壊れかけた頭の中をどうにか正常に戻して、自分も寝ようと寝転んで思いた

チャイナの膝に頭を乗せて目をとじた



「膝枕ってけっこう良いもんだねィ」



すぐに振り払われるものだと思っていたがチャイナはかたまったまま動かない
ふと目を開けると真っ赤な顔したチャイナが居て伝染するように自分の顔が熱くなるのがわかった

頭をあげようとしたところで頭を押さえつけられた



「お前が悪夢忘れないように唸り出したらすぐ起こしてやるアル。これも調査のためネ、さっさと寝るヨロシ。」



「お、おう」



もう一回チャイナを盗み見ると目をそらしたまま真っ赤な顔してる
なんだか眠れる気がしないけど、アイマスクを装着すると幾分か緊張も薄れて微睡みが訪れる

悪夢のせいで睡眠不足だったから
すぐにでも眠ってしまいそう

きっと今度見る夢はお前の悪夢
夢の中でも翻弄され続ける、ずっと…



夢まで魅せて

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