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□バレンタイン企画連載
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バレンタイン
全然心に響かない
貰えるばかりだったら嬉しいけど、大半は友達との交換で自分まで頑張って手作りだ
楽しいのは楽しいのだけど、作るのはそう簡単ではなく
自分に料理の才能は皆無なのだと思い知らされた
きっと、みんな可愛いチョコを作って、可愛く見えるように特殊メイクをして、実は好きだった男の子に告白するんだろうな
何度目かの練習チョコを味見してみる
何故生チョコなのにこんなにかたいの…?まるで飴のようにカチカチだ。
砂糖入れたのが間違いだった?
もう、わかんない!
慣れた手つきでスマフォの画面をタップする
そしてメール作成
そよちゃんにヘルプメールを送るのだ

最初は作る気なんてなかったのに
お友達と交換が第一の目的で、買ってラッピングだけ可愛くして渡そうと思っていた
それならまあ簡単だし、たぶん、できるし。
そう思っていた矢先だった。
廊下でばったりあのイヤーな先輩に出会ってしまった
全然接点なんてなかったはずなのにいつの間にか犬猿の仲になっていて、いつの間にか学校中で有名なコンビ扱いだ。
顔を合わせたらなんとなく、睨み合うか殴り合うかになってる。



「バレンタイン、なんか持ってこいよ」



会った途端にそのセリフだった
目があっただけなのに、数メートル先に居るくせに、そいつはそう言った



「何言ってるアルカ?」



最初は聞き間違いかとも思った。
まずそんな仲でもないし、こいつだったら後輩にも先輩にも同級生にも人気だし。貰えなくて困るよりもらい過ぎて困るタイプだ。
私もすこーしは顔だけならば、ちょーっとだけどかっこいいと思う。いや、銀ちゃんの方がかっこいいけど!



「お前どうせ料理とかできねぇんだろィ?」



「でーきーるーアールー!」



グーで軽く殴ってやろうとしたがひょいっとかわされた
めげずに蹴りもいれてみたらやっと命中
少しはスッキリ



「いてーな。できんならバレンタインで証明してみろって言ってんでィ。どうせできないだろうけど」



あまりにもムカつく言動だったからその時私は咄嗟的に言ってしまった



「私、こう見えてもお菓子作りなんて朝飯前アルよ!」



言った後にわかった
こいつ、私にこう言わせるために言ったんだ
わざと、はめやがった!
ニンマリと笑う口の端がそれを証明していた



「ちゃんと食えるもの作ってこいよ、ゴリラ女。」



こうして私のお菓子作りの特訓が幕を開けた
そよちゃんから生チョコなら簡単にできるよ!なんてアドバイスをされ作ってみるがどれもイマイチである。
クリームチーズを混ぜたり、生クリームとチョコレートを温めたり、いろいろためしてみるがうまくいかない。
何故チョコレートは鍋で温めるとあんなに焦げるんだ!
メールの返事を待ちつつ試作品を自分の口の中に片付けていく
どれもなんとなくイメージと違う。今まで食べたチョコレートの味とまた違う。
チョコってこんなに大変なの?
お菓子作り向いてなさすぎる

震えるスマフォをタップしてメールを開く
レシピがネットにたくさんある…か。
レシピ見てもついついアレンジを加えたくなって途中で失敗してしまう自分
レシピ通りが苦手だった
でも、そよちゃん曰く、お菓子作りは分量や時間、温度でガラリと違うものができてしまう。らしい。

今度はちゃんと作ってみますかー。とレシピ通りの分量時間温度を守り作り始めてみる
あれ?これ、天才的じゃん
みるみるうちに生チョコは完成
味見もしたし、けっこう美味しい!今まで作った練習チョコの中で一番美味しい!

これで奴を見返せる
あともう少しでバレンタインデー
これで絶対あいつを見返してやるのです!



「ラッピングの練習忘れてたアルー!」



バタバタと慌ててラッピングの道具を買いにでかけた
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