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□大切講座
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この世で1番大切なことって何かわかる?
わからない?
わからないんだー
んー、教えて欲しい?
やーだ
神楽だってすぐわかっちゃうよ
だから今は秘密
ね?大きくなるのが楽しみになったでしょ



ふわっと思い出したマミーとの記憶
まだマミーが生きてたら、私はまだマミーってよんでるのかな?
ねえ、マミー。私、わかっちゃったかも。わかっちゃったかもなんです。

大切なこと



「神楽、ババァからの差し入れの弁当。どうせ朝食ってねぇんだろ?」



学校についたすぐでちょうど通りかかった銀ちゃんに大きな弁当箱を渡される
親の居ない私はいつの間にか周りに支えられている。わかっているけど、素直にお礼も言えない
そんな私をわかっているように弁当を押し付けると銀ちゃんはだるそうに寒い廊下を歩いて行った



「これだけじゃ足りないアルヨ」



照れ隠しでいらない言葉を吐いてしまうけど
寒い廊下が打ち消してくれた



「弁当箱でかすぎんだろィ。何それ重箱?」



いつの間にか真後ろに立っていたサド野郎
そのまま後ろ頭で頭突きをしてやるとサドも頭を後ろに下げて避ける



「よく食べる女子の方が綺麗になるアルよ!」



「それは食いすぎって言うんでィ。」



ぶーっとブーイングの意味で唸ってやるとサドは何もなかったかのように下駄箱を通り過ぎて階段まで歩いていく
それを小走りで追いかけて隣りに並んでみる



「ねぇ、この世で1番大切なことってなんだと思うアルカ?」



前より広がった身長差を感じながら見上げると整った顔だからか朝日を浴びるとまた違った雰囲気を漂わせていた
イケメンって言われてるし、なぁ。



「武士道」



「ぶっぶー。残念不正解アル!」



私がわざとらしく顔を歪めといてやるとやっぱり振り返ったサドはそれを見て逆に変顔を返してくる



「お前が武士道を理解してねぇだけでィバーカ」



口をツーンと尖らせてふーんっなんて不機嫌そうに言ってみるけど
サドがもう私を見ていないことなんて知ってるから意味がない
あ!っと良いことを思いついて踊り場までかけ出して振り返りサドを見下ろす
後ろから日が当たるせいかサドの驚く顔がよく見えた



「私が本当にこの世で1番大切なこと教えてあげるアルよ!」



人差し指なんか立てちゃって、後ろからの光でもしかして私天使に見えちゃってない?とか一人妄想
そんな私をサドは立ち止まり見上げた



「参考程度に、聞いてやらァ」



立ち止まったくせにめんどくさそうな表情
大切なことだよ?大切なことを教えてあげるって言ってるんだよ?
また唇を突き出す
そんな反応つまんないじゃん



「何アルカー!その態度!知りたいくせにー!」



私がちょっと高めの声で怒るとサドはそれを無視して階段を登り始める
踊り場まできたところで私なんてガン無視でまた次の階段へと足をかけた
それを逃さないようにと追いかけてやっとサドの一歩後ろにつく



「もー!知りたくないアルカー!?」



後ろからバンバンと叩いてみたりゴンゴンと殴ってみるけどサドは振り向くことはしなかった
それをまた文句を言いながらついて行く



「チャイナの大切なこと、って人?」



「人?」



そう、人。と頷くサドはなんだか真剣そうで、私も真顔になって首をふる
そっか。なんて答えたらまたサドは教室に向かって歩き出す



「え?人って何アルカ?」



それに追いつくようにまた小走りで追いかけた
サドは今さっきと同じ興味なさげな表情に戻っていた



「ねえ、好きな人のことアルカ?」



そう質問をぶつけるととおりすぎて行く生徒なんか無視して立ち止まる
なんだか、他人や周りなんて関係なくて2人だけの世界みたい



「そう、好きな人でィ。」



そうちょっと小さめに呟くとくるりと向きを転換して私と向かい合った



「好きな人、居んのかィ?」



真剣な瞳、遠くからでもわかっちゃうね。
高鳴る心臓とグルグルとすごいスピードで回転している脳内
その表情、みたことないや



「そ、それとは関係ないアル!」



誤魔化したように笑ってサドの横を気にしないように意識して通り過ぎた
でも、やっぱり…
くるりと振り返ると今さっきよりも急接近した私たち
距離が違うとまた雰囲気が変わる
一気にまたこの世界に引き込まれる



「なら、大切なことはなんでィ?」



それはね、と話そうとしてやめる。
それは、やっぱり自分で見つけなきゃだよ。
そして私はね、大切なことを知ったから、緊張するけどちゃんと伝えなきゃいけないね。
わかってるよ。銀ちゃんにも妖怪ババァにも、沖田にも



「私と付き合ってくれたら教えてあげるアル」



きょとんとした顔は可愛くて新鮮で心の中でシャッターをきる
これは永久保存版っと
覚えていられるように頭の中に貼り付けた



「好きアルよ」



答えの出てこない君を
もう少しだけ待っててあげる
だから、はやく大切なことに気づけ!バカ!



大切講座

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