SS

□ご予約は三日前から
1ページ/1ページ

コトンと可愛らしく彼の頭にのせてみる
いつもはしないようなことだけど、今日はクリスマスイヴで明日はお互いちょうど仕事で会えないから
今日はクリスマスと言う口実をつくって甘えてみたかったのだ



「え…お前どうしたんでィ。熱でもあるのかィ?」



動揺している彼を上目遣いで覗き込んでみるけど目線はそらされぶつかり合うことはない
全部テレビからの受け売りだけど…やってみたかった



「大好きヨ?」



自分自身の精一杯の力を出し切ったと思う
甘えすぎて自分が気持ち悪くなって吐いてしまいそうだ



「そうか。俺が精神科に通うべきだとよくわかったぜィ。」



いつも通りの友達同士の会話みたいなふざけた内容
自分なりの頑張りは無意味だったことを悟る



「やっぱりお前と付き合うのは間違ってたかもしれないアル」



のせてた頭を持ち上げて座り直す
なにも返事をしない沖田は勤務の最中でサボりついでに公園で俗に言うデートをやっていた
最終的に公園の真ん中にある噴水の周りのベンチに座っている



「いきなりこられてもこっちは準備ができてねェーんでィ。三日前には宣言しとけ。」



不貞腐れた声だけを隣りできいて私も口をつんととがらせる
恋人同士でそんなの見たことねぇよ!



「前からわかっててドキドキするアルカ?もっとトキメキって奴を感じてみたいアル。」



ふてぶてしい沖田に何発か蹴りを入れてやりたかったがせっかくのクリスマスだから我慢我慢!
でも結局喧嘩しかしていない
イチャイチャしてみたいのに。
お互いに恋とか愛とかに慣れてなくて戸惑ってしまう



「俺は、前からお前と会うこと考えてたらドキドキすらァ」



嫌そうな顔していう割にはその言葉の糖度は高くて、ずっと前から酸っぱい言葉や苦い言葉、時には辛い食べ物を食べさせられてきた私には甘すぎるくらいに感じた

沖田の顔が見れなくてうつむく



「間違えた。胃がムカムカするだけでィ。」



後のつけたしがまたその甘さを引き立てて恥ずかしくなる
どんな顔して言ってるんだか想像して口元も緩む



「お前ってシャイ?照れ屋さんアルカ?どSのくせに?サドのくせにアルカ!?ぷぷー!」



からかうように笑ったらいつもの調子
喧嘩なのに楽しくて仕方ない会話が始まる
それは愛のささやきなの?



「それやめてもらえますかィ?言葉の綾でさァ。照れ屋とかじゃねェから。まじやめてお願い。」



冷や汗かいてるなんて一目瞭然で笑いはおさまらない
前から言っていたら彼はずっと私のことを考えてくれるのだろうか
それなら、それでも良いかもしれない



「えーっと三日前には言っとかなきゃいけないんだよナ?」



焦って否定する沖田も面白かったけど、私のことでドキドキしてる沖田の方がきっと好きだから
頑張ってみる



「おー、まあ。」



落ち着きを取り戻そうと平静な顔して頷くのを横目で見ながら含み笑い
沖田から目線で怒られて目を逸らす



「じゃあ、お正月デートしよ?…もちろん、イチャイチャ付きでネ!」



自分で言ってから恥ずかしくなって顔が熱くなるのがわかる
赤くなっているであろうほっぺたを寒さでかじかんだ両手で冷やした
沖田はそんな私を鼻で笑ったから今度は私がガンを飛ばす



「良いぜィ。なら、俺からも…今度さ」



「今度っていつアルカ」



すかさず突っ込むと沖田が口をモゴモゴとさせたので嬉しくなる
私は負けず嫌いだからかついついお返しがしたくなってしまうようだ



「明日の夜中」



「三日前には言っとくアル。無理ネ。」



冷たく突き放すと沖田もムッとした顔をする
そんな顔をさせるのが嬉しくて、楽しくて、やっぱり心の中で舞い上がってる
だって、こんな顔させられるのって沖田の中で特別な存在だけだろうから



「しょうがねーな。じゃあ三日後」



ヤケクソな沖田に笑いつつもその先の言葉を楽しみにしながら頷く



「三日後、なにアルカ?」



今度は沖田から目をそらされずに可愛く上目遣いで覗き込めた気がする

沖田との視線は絡み合う



「三日後、チューします。」



いつものエセ江戸っ子口調じゃないし、三日後と宣言されても心の準備はできてなさそうだし。
何もかもが難しく感じたけれど、
私はただ顔を真っ赤にして頷くだけだった



ご予約は三日前から

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ