SS

□全ては計算通り
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ガサゴソと漁るのは屯所の端にある隊員たちの寮の中にある一室
ある程度生活感のある汚さの中で冷たい指先を震わせながら動かして中身を覗いていく



「やっぱりあったアル」



部屋の片隅の隠されたスペース
ズラリと並ぶ卑猥なパッケージのDVDケースたち

あることは想像ついてたけどね
むしろ願っていたんだけどね

弱点を知りたくて忍び込んだのだからこの収穫はありがたい

これで次回脅してやろう!

素直にパッケージを手に取るとグロ画像のオンパレード
名前的にはピンクな感じなのになぜそうなった!
ついついあまり見えないようにしながら棚に戻す
その隣に手を伸ばして深呼吸
題名はロリフェイスコスプレプレイ〜らめありゅう〜らしいのでこれは確実にAVだろう
そしてきっとグロくない!

手に取るとやはり普通の女の子。だが格好に目が惹かれる…これは…私か?
顔はまあ違うんだが…髪型だったり服装が似通っている

え、あいつってこんな感じのが好きなのか!?
目から鱗がポロリと落ちたようだ
瞬きを一回
遠くからみたら私の写真のようにも見える

もしかして…あいつはこんなプレイが前から好きで私に近寄ってきたのか!?こわっ!?いつも刃を合わせているのに心の中ではそんなの妄想していたのか!?

…弱点ではなくもっと大変なものを見つけてしまったかもしれない。
これからの関係ギクシャクしちゃうよ

とりあえず元の位置に直そうと手を差し込んだ時だった
障子の開く音に振り返ることできずにびくりと反応した



「…とうとう見つけてしまったか」



後ろでまるでカッコつけたようなセリフを呟くことにまたぞわぞわときてしまう

まずこのグロ画像でも引いたけど



「いや、今手にとっただけアル…!だ、題名しか、見てないネ!セーフ!」



心の中ではもちろんすごいトラウマになっているので見なかったことにしようと強く思った
私は何も見ていない!



「いや、題名見て即アウトだろィ。」



もう一度題名を読み直してだいたいのことを把握してしまった
こいつとりあえずチャイナ服好きなんだ…しかもロリコンなんだ…。なにそれこわいんだけど…。



「見なかったことにするアル。大人はなんでも割り切って生きてるアルヨ…。とりあえずロリコンきもいから近寄るな」



「それなにも割り切れてなくね?」



やれやれと頭に手を当てる彼は本当に危機と思っているのだろうか
むしろ私の方が危機か!
自分の置かれている状況に気づき少し後ずさる



「そんな警戒しなくてもなんもしねぇよクソガキ」



咄嗟に文句を言い返そうと思ってもうまく言葉が出てこなくて唸るだけだった



「…ひいた?」



「…銀ちゃんも、まあエグいものを見てたアル。ひいたけど。」



結局引いてんじゃねぇかとボソリと呟くとその場に座り込む
それでやっと解放されたような気持ちになって体制を整え少し空間を開けて座り直す



「まあ、これはお前の趣味なだけで現実にそれを持ち込んでるわけじゃないもんナ。」



慰めるように自分に言い聞かせると今まで頭を抱えていた沖田がやっとこっちの世界に帰ってこれたようだ
視線がぶつかる



「…現実がこれだからこうなっただけでィ」



意味がわからずにポカーンとする私に沖田は真顔のまま、中途半端に空いた空間をつめる
私の中で引いたお互いの領域のラインを簡単に越えた



「わかってないならわかってなくて良いけど。」



そう言いながらも止まらずに接近してきている
向かい合うように顔と顔が間近にきたところでやっと我に返って突き飛ばす



「な、なにアルカ!」



突き飛ばされた反動のままに畳に寝そべる沖田は女顔なせいか少し色っぽく見えた
頭をガシガシとかいた腕のゴツっぽさに男だと気づかされてそれを見守るしかできない



「やっぱり、現実って厳しいねィ」



腕の力を抜いたのかパタリと動かなくなる
眠ってしまったのか、それとも突き飛ばした衝撃で死んでしまったか!?

心配になりながら顔を覗き込むととじていた瞼があがりビー玉みたいな瞳と目があった



「俺、お前のことそんな対象として見てる」



その意味をやっと理解して赤くなる
それってもしかして、もしかして…



「は!?エロい目で見てるアルカ!?卑猥アル!」



はあっと寝転がったままため息をつくとゴロンと私とは反対側に寝転んだ
私はそれを後ろから覗き込む
後ろからならなんだか安心だ



「だから、好きってことでさァ。バカかお前、そうか、バカだったねィ。知ってた知ってた。」



好きとか口走っといて最後には落とすってなんていう手法?全然うまくいきそうにないんだけど!
ムカつく!



「お前が回りくどい言い方するからアル!なら最初から好きって言えヨ!」



転がってる沖田をまた転がせて私の方を向かせると
子どもが拗ねたみたいな顔して私を見上げる



「好きって言ってたらチューしても突き飛ばさなかったかィ?」



純粋な瞳で見つめられるとなんだか小さな子どものようで突き放すことができない
出てこない言葉の代わりに低いうめき声が出てくる

それでも無垢な瞳で見つめられるからついつい顔をそらした



「わ、私は、好きじゃないし!むしろ嫌いアル!」



やっと言い切っても視線は痛く突き刺さる

見たら負ける、見たら負ける、絶対負けちゃう!
視線がそれていくのを雰囲気で感じてゆっくり沖田に視線を戻す



「それも知ってるから言いたくなかったんでィ」



横顔しか見えないけど不機嫌そうなのは明らかだ
それをどうにかしたいとか思っちゃうのは私が変だから?
答えが出てくる気配もなく、勝手に手が伸びてその横顔のほっぺたをつねる



「拗ねる前にあと一押ししろヨ、バーカ」



そう言ったらやっと振り返ってほっぺたをつねっていた手を握られる
手を引こうとしたがそれは思ったより硬く握られていて離れることは叶わない



「お前があと一押ししろっつったんだからな?」



拗ねてた顔は不敵な笑顔に変わって
私は驚きつつも心の中ではそれを受け入れてしまってる

唇が重なるまで

あと一秒



全ては計算通り

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