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□ラッキーアイテム
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彼を見つけてニヤリと笑う
今日たまたま見た占いでの私のラッキーアイテムはバスケットボール
そして今日は体育でバスケットだ

これは確実に神が私の味方についている
絶対そうだ!

確信を持つと共にバスケットボールを持ってどうやって使うべきかと頭を悩ませた

バスケットボールをどうやって使えば良いんですか、神様

やっぱり答えなど返ってこない

高校生になってからは体育は別々で行われていたが、今日は雨だったせいで半分に区切られているものの同じ体育館の中だ

このバスケットボールの使い方
チラリと彼を見てひらめく

そうか。こうすれば良いのか!



「ああ!手が滑ったアルー!!!」



滑ったように助走つきであいつの顔面めがけてバスケットボールを放つ

いつもの恨み、晴らしてやる!
いつもいつも憎たらしい細々したいたずら、嫌がらせをしかけやがって!

その気持ちが届いたかのようにバスケットボールは彼の顔面に直撃した
バスケットボールは跳ね返ってどこかに飛んで行ってしまったものの彼は体育館に崩れ落ちる



「いってー…!クソチャイナ」



赤くなったおでこを撫でつつ悪態をつくあいつ
その光景に笑いを堪えながらバスケットボールを追いかけた



「悪かったアルなー。バスケットボールって大きいからちょっと滑っちゃったアルー。」



態とらしく棒読み風に言ってやると振り返った瞬間に私の顔面にバスケットボールが直撃した



「ふが!」



「わりー、クソチャイナー。土方コノヤローにパスしようとしたら手が滑ったわー。」



ニマニマと悪い顔をしながら私よりも嫌味ったらしい棒読みだ

ムカつく

ボールが手元に転がっていたのでそれを手に取り
全力で投げ返す



「こっちのボール返してやるアルッ!」



狙ったのはお腹だったが、ドスッと鈍い音をたてて沖田の胸あたりにあたった
それを逃がさないようにと二つの腕でボールをとる沖田は表情では余裕そうに笑った



「おい、鼻血出てんぞ。ププー」



おかしそうに片手で口元を隠して片手ではボールをだっこしている
指摘された鼻を隠す



「お前のせいアル!」



小走りで体育教師に保健室にいくと伝えて体育館を出るとその後ろから沖田が走ってきた



「何アルカー!?」



また嫌がらせをしにきたのかと睨むと沖田も睨み返す



「俺もお前にデコやられたからねィ。」



2人肩を並べたら、なんだか違和感がして心臓が大きく音をたてた


なにこれ、変だ

自分の心臓の異変を感じつつ体操服の袖で鼻血をぬぐう
もう袖は赤黒く染まっている

鼻血がたくさん出てるから心臓が変なのか
それとも心臓が変だから鼻血がとまらないのか

考えたって答えは出そうになくて鼻をおさえて上を向く



「それ下向いた瞬間ドバッと出るぜィ」



「え!?」



"まじでか"と言おうとして顎をひいた瞬間に廊下に血液がポタポタと落ちた



「ほら、言わんこっちゃねーだろィ」



保健室まであともう少しなのに遠く感じる



「ちょっと鼻おさえてろ」



返事もする前に沖田は走り出して保健室に入る
私もあとを追いたかったがポタポタとおちる鼻血に足止めされて動けない

鼻をおさえたまましゃがみ込むと足音が帰ってきてティッシュの箱を渡される



「ティッシュもらってきた」



それで鼻をふいておさえている間に沖田がせっせと床の鼻血をふいてくれた



「お前のせいだから礼は言わないアル」



自分でも可愛くないとはわかっているが不貞腐れたように呟く
沖田もそれに返事はせずに血で赤く染まったティッシュを抱えて保健室にまた戻って行く
その後ろを俯きがちに追って保健室に入った

怪我の理由を保健室の先生に2人で怒られたが無事に処置をしてもらい保健室を出る



「俺これからサボる…から付き合え。」



ぐいっと腕を引っ張られて誰も居ない空き教室に入る

また、鼻血出そうだ
心臓がうるさくなってる

顔を合わせるのもなんだか気恥ずかしくてうつむく



「なんだよ…」



顔をあげない私に気がついたのか沖田が困ったように呟いた



「お前のせいで、また鼻血出そうアル」



「は?」



覗き込むようにかがんだ沖田と目が合うと顔が熱くなる

恥ずかしいし、緊張してるし、いつもと違う感覚…



「もう、見るな…!」



手で顔を隠したところで自分の熱は抜けていかない
心臓が飛びててしまうんじゃないかと心配になるくらい激しく動いている



「お前…もしかしなくとも俺のこと好きか?」

「はあ!?」



すぐさま顔をあげて否定しようとするが顔を合わせたらやっぱり心臓が変で否定することもうまくいかない



「好きとしか考えられねぇ顔してる」



どんな顔だよとツッコミたいがきっと今鏡見せられたら私は石になるだろう
自分でもわかんないくらいめちゃくちゃな顔してる
鼻栓もしてるし…



「うるさいアル…」



これはたぶん肯定してしまってるんだろうなと自分でも思うくらい弱々しい声だ
それに反比例するような強い拳で沖田にアッパーを決めた



「好きな奴にこんなことすんの、お前だけでィ…」



お揃いの鼻血を出した沖田に、やっといつも通りにクスリと笑う

バスケットボールよりもこっちの方がラッキーアイテムだったかもしれない

明日は恋愛運もチェックしてみようと心踊らせた



ラッキーアイテム

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