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□ペアストラップ
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携帯の着信音に遅めの朝食を中断させて目線を落とす
姉ちゃんが食事中に"そうちゃん!携帯いじっちゃだめ!"と言ったから開いたメールに目を落としつつまた箸を持ち直す

いきなりなんだろう
昨日も学校でいつも通りに喧嘩したチャイナからメールで"今日ひま?"とかそんな意味の言葉が表示されていた
珍しいこともあるもんだ
高校はいってから遊ぶことなんて一回もなかったよなとか考えながらご飯を一口
だんだん早く返事しなければいけない衝動にかられてご飯をかきこんだ

高校から携帯を持ち始めたがその動作は慣れたように素早く返事を打ち込む

"お前より忙しいけどひまな方"

自分でもどっちなんだよとツッコミを入れつつそのメールを送信して部屋着のジャージから服を着替える
バタバタと支度を始めた俺を不思議そうに姉ちゃんが覗き込む



「あら、でかけるの?」



「はい。友達と遊びに行ってきやす。」



友達と言うだけで姉ちゃんは嬉しそうに笑った



「気をつけてね」



もう一度俺に笑いかけてからその場を去る姉につられて微笑んでから服装チェック
チャイナと遊ぶからじゃなくてただ最近周りに影響を受けてか服装が気になるようになっただけ
みんな髪をワックスで跳ねさせるが俺にはやり方はさっぱりわからずそれなりに寝癖を直す
携帯がまた何かを受信した音をたてたからメールの返事だろうと予想をつけてから開く
ドンピシャだ。チャイナから、午後から遊びませんかのお誘いメール
下手なお誘いメールをこうやっていとも簡単に理解するのはそれなりに長く相手を見てきたからだろうか

午後からならもうすぐだ
これからでかければ余裕で間に合う程度の家の距離
お互いに家の近所の待ち合わせ場所をメールで決めてから姉ちゃんにいってきますを言ってからでかけた
待ち合わせの駅につけば久しぶりに見た私服姿のチャイナがいた
こいつも周りに影響されてか少しばかり前より女らしくなった
…可愛くなった



「よう。今日バイトないって珍しいアルな」



俺に気づいたチャイナがいつものように屈託のない笑顔を浮かべて俺に近づいた
それに俺も普通に答えねばと平静を装う



「今日って祝日だろィ?」



「あ、そっか。私もそうだったアル。」



納得して頷くチャイナの姿を直視できないでいる自分にかなり呆れる
ゴクリと息を飲んでからゆっくり深呼吸で落ち着かせる
こんなに身長差は大きかっただろうか…
心臓は激しく高鳴るばかりだ



「で、今日は目的とかあんのかィ?」



チャイナは目的?と復唱して首を傾げる
そんなものはないようだ
こんな時もっとカッコ良くエスコートとかできたら良いのだろうが
そんなことができるほどに俺はまだ成長していない



「どっか適当にフラフラする?」



それにコクンと頷くのを確認すると友人がよく遊びに行くと言う街を目指して歩き出した
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