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□沖誕2020ver
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近藤から言われた、誕生日おめでとう。で自分の誕生日を知った。
そう言えば今日、誕生日だったのだ。自分でも気付かぬ間に歳をとっていた。
こんな日には事件なんか怒らなければいいけど……。
そんなことを考えながら見回りをしていた時だった。
事件は起こる。
それは強盗立てこもり事件だった。店員である、女と客3名ほどの人質を取られたコンビニ強盗事件だ。
それも相手はなかなか強い天人らしい。
なんと、夜兎である店員とやり合って店員の方が負けたようであると連絡が入り焦る。
俺の知ってる夜兎ってあいつしかいねぇけど、あいつだよな?
そんな不安をよそに土方さんから命令で1番の切り込み隊長として頑張れなんて言われる。
たぶん、3人の人質を解放したとして、犠牲になるのは夜兎の店員だけだろう……。
「土方さん、もう切り込んでいいですかィ?」
焦る気持ちから突入しようとするが、土方は険しそうな顔で中を伺うだけだった。
周りを包囲している、大人しく出てこいとは呼びかけているが、返事はなく、舐められている状態だ。
「俺にいい考えがある」
土方がやっと重たい口を開いた。
それはとてもじゃないが沖田のやりたくないやり方であった。
沖田が女装して店内の人質と代わり、一気に突入、やっつけるという作戦だった。
なぜ女装、と思われるかもしれないが、もし隊士だとバレると人質とは代われない。しかも非力な女の方が人質には向いているのだ。
そのためになら沖田に女装してもらおう。という土方の考えであった。
「いや、山崎で良くないですかィ」
そんな提案をしてみるも土方は首を横に振る。
「夜兎より強い天人だぞ、山崎で耐えられるか……」
その言葉にしょうがねぇなぁと着替える覚悟をすることになった。
その時店内は、緊迫していた。万事屋の家賃が足りず、アルバイトに行かされていた神楽が夜兎である天人の男に殺されかけていたからである。
天人は片手で神楽の首をつかみ壁に張りつけるようにもちあげる。もう片方の手では拳銃を構えて人質を見張っていた。
そこへ真選組からの連絡が店に入る。
天人は拳銃を置いてコンビニにある電話を手に取り、真選組からの言葉を待った。
「逃走用の車と新しい人質を用意した。とりあえず人質を交代させてくれ」
その要求に天人は少し考える。
「人質は交代しない」
ガチャりと天人がきるとコンビニの周りがさらに騒然としているのがわかる。
神楽は真選組が来てるのがわかってるのかわからないのかとにかくその天人の手をはなそうともがいていた。
そこへ、店内に女が入ってくる。
「誰だお前は!」
それは沖田だともがきながらも神楽は気づいた。
真選組が到着したという安堵を少し浮かべたが、まだ形勢は変わっていないままだ。
「人質、交代してください!」
メガホンで話しているであろう真選組の声が外から聞こえてくる。
その声に促されるように女装をした沖田も天人に近寄るのだった。
天人はしょうがねぇなぁと神楽を解放しようとする。
手負いの人質では身動きがうまくとれないからである。
コンビニ内に居た3人も渋々解放を認めた。
しかし、居座る者がいた。
「……私は残るアル」
そう言って、天人へ殴り掛かる。
右手の拳て1発天人に浴びせたが、ピクリともせずまた神楽の首元を右手で掴む。
「お前は殺さなきゃわからないらしいな」
今度は天人が左拳を構えて殴りかかろうとした時だった。
沖田は隠し持っていた刀で切りかかる。
天人はそれを予期していなかったらしく、まともに左腕に受け、腕に傷をおう。
それでも神楽をはなそうとはしない。
「そいつを離しなァ、人質は俺でィ」
「そんな物騒なもん持った人質なんか要らねぇだよ」
腕におった傷は治りかけている。
こいつも夜兎か、気づいた時には遅く、なかなか切りかかれない。
こいつは外に出して干しちまえばいい。わかっているけどやり方が思い浮かばない。
とにかく斬るしかねぇ!
その考えに至った沖田はまた振りかぶる、剣を両手で持ち剣道の構えのようにして先程よりも強く、切り抜く。
今度は天人の右肩から左脇腹までを斜めに切り、相手も怯む。
その隙に神楽は抜け出し、やっとの事で立ち上がると何とか沖田の方まで来て天人と距離を取り倒れる。
人質は居なくなった、応援呼びてぇところだけど、チャイナかくまった状態で動ける状況じゃねぇ……
天人は先程よりも怒ったようで右手で殴りかかってきたかと思えば、左手で銃を持っていると。
殴って来たのを避けることは出来たが蹴りまで入れてきてそれは刀で受け止める。
靴にめり込む刀と、壁まで追いやられた沖田にもう逃げるすべはなかった。
「人質は1人で十分だぜ、死にな」
そう言って身動きの取れない沖田に銃を突きつけてくる。
そして、引き金を引く、沖田の左肩に命中した。
それじゃあ当たらないと思った天人は足を外し、肩に当たり怯んでいる沖田の頭に銃をぴたりとくっつけた。
これで終わり……
なわけねぇ!
その瞬間、最後の力を振り絞るように神楽が後ろから飛び上がるようにして全体重をかけてそいつの頭を殴った。
それだけでもう天人はクラクラしていたが、トドメに沖田が首の後ろに切り込む。
といっても
「峰打ちでィ」
そういった時には天人は気絶していた。
神楽はなんとか動けるまで回復したらしく、外へ出て真選組を呼びに行った。
沖田は左肩を抑えて、散々な誕生日だ、なんて考えていた。
天人が連行されて行った時だった。
沖田も着替えて手当を受けていた。
チャイナが近寄ってくる。もう元気そうで少し腹が立つ。
俺は左肩が痛てぇってのに。
「元気そうだな」
「まあ、夜兎は治りが早いからナ」
「お前なんで残ったりしたんでィ」
これはどうせ俺一人じゃ無理だったろうからとか言われるんだろうが、何となく聞いてみたかった。
本人から言われたら、撃たれてない右の腕を使って何かしらやってやろうと思っていた。
「自分でも、わかんないアル。お前が来たと思ったら……」
何にだよ、なんでだよ、助けに来てやったのに、といろいろ問い詰めたいところだったが、神楽がなにか頬を赤らめるので聞かないことにした。
そんな時だ。近藤がふと現れた。
「総悟〜!誕生日なのに悪かったな〜!女装までしたんだって?大変だっただろう」
近藤はタイミングが良かったのか悪かったのかそんなことを言うもんだから、沖田は神楽に誕生日がバレてなんだか恥ずかしいような気がした。
まるで秘密がバラされたような。
「もう、近藤さん、大丈夫ですから!近藤さんはさっさと帰ってくだせェ!」
恥ずかしくなった沖田は右手だけで近藤を押してパトカーまで乗せると見送り神楽の元へ戻る。
「お前の女装なかなか似合ってたのに見れなかったなんて可哀想アルナ〜」
ニシシとでも言えるような嫌な笑い方をされ、誕生日のことは触れられないことに少し残念な気持ちになった。
ちょっと恥ずかしかったが、やはり知られたからには祝われたい、なんて思ってしまう。
「うるせぇ、俺だってしたくなかったけどしょうがなくだな」
「なんでアルカ?」
その質問に詰まる。あ、これはあいつが言いたかった事のそのままかもしれない。
なんて、そんなわけないんだろうけど。
「あ、ちょっと待ってろアル」
そんなことを言われて沖田も素直に待っていた。
そこで待っていると神楽がコンビニから何かを持ってきて沖田にポイッと投げ渡した。
「それ、私の給料からだから大事に飲むヨロシ」
渡されたのはおしるこ。
この夏場に!?
そうツッコミたいところでもあったが、こいつには何を言おうと仕方がない。
「俺はコンポタの方が好きでィ」
「贅沢アルナ」
そういう神楽は冷たい炭酸ジュースを飲んでいた。
しばし無言になる。
沖田も神楽も言葉が出てこない。
あの戦いの後だ。やはり多少の疲れが残る。しかし、考えていることは同じだった。
ただ、護りたかった。好きだから。
聞かれた質問にこう答えられたなら、良かったのに……なんて後悔までしてしまう。
だが、神楽にはまだとっておきの告白の言葉があった。
「誕生日おめでとう」
その言葉に沖田はたじろいでしまう。まさか、その言葉が貰える時がくるなんて思わなかった。
「……うるせェ、バカチャイナ」
それが2人の告白と告白の返事であった。
好きなんて、言えないけれど
護りたいなんて、言えないけれど
いつかきっと、君に伝えよう。