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□キスの日
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ベンチで寝そべる彼女は何も変わってないように見える

白くて大きな犬、定春といつも通りに散歩に行き、日陰のベンチを選び昼寝をする彼女は、相も変わらず真っ白の肌をさらして隙だらけで眠る

それを彼はいつも通りに発見するのだ。

昨日は素通り一昨日は流し目で目視、今日は久しぶりに目の前に立つ

自分の中で湧き上がる感情は言葉にならずに、そのまま刀に手を伸ばす。
勢いよく振りかぶればガツンと大きな音を立ててベンチに傷をつける

「オイオイ、お前、税金で生活してるクセに国のもの壊して大丈夫アルカ?」

「ふん、狸寝入りかィ。手加減してやったから傷だけでィ。まだ使えらァ」

ふん、と真似たのか笑ったのか神楽は手元の番傘を天にさす

「寝ててもお前の刀くらい簡単に避けられるアルヨ」

余裕そうな彼女は見た目だけでは華奢で病弱そうな真っ白さを纏っている
腹の底に何を隠しているのかなど誰もわからない

「なら、これはどうでィ」

刀を腰に戻すと沖田はキャラメルのような髪を風に流して拳を振りかざす
それを神楽はわかっているように受け身を取ろうとした結果、彼に捕まる
傘を持つ手と逆の手を引かれて不意打ちに抱きしめられる

「な、なにアルカ」

もがき、番傘の方で殴ろうとするもそれを片手で受け入れられる。そして、奪い取るように沖田が傘を持った。傘から離れぬ手に沖田は軽くキスをする。
そうすれば簡単に傘空手離れてしまい。傘に入るには沖田から離れることはできない。

「こんな攻撃は初めてってか」

笑う彼に顔を真っ赤にさせる彼女。肌が白い分、耳まで赤いのがわかりやすい。

「は、反則ネ。こんなことするやつ!!!」

「ルールなんてねェだろ、最後までコートに立ち続けた者が勝者でさァ」

「それは某ミラクルテニスだけアル!」

キスをされた手を払おうとするも反対側であった左手はまだ拘束されている。

ギュッとひねり揚げれば簡単に外れた筈なのに、今回はそう簡単にはずれはしない。

…さっきので、動揺してるだけネ
こんな奴なんかに、簡単に負けたりなんか…!

そう思ったのもつかの間、沖田の頬が顎にあたり、首筋に冷たいキスを落とされる。

「な…!今日は何アルカ!?お前もしかして沖田じゃないアルナ!??」

「残念、正真正銘の沖田総悟でさァ」

そう言って唇を耳元に寄せて囁く。

「強くなるって言っただろ?」

神楽が一歩後ろに下がっても、それに合わせるように沖田も前へと沿う。傘の中で二人きりだ。

「なんか、違う…!」

真っ赤になっていく彼女を面白そうに沖田は見つめる。

好意を見せるのも強さだって気づいたのはきっと、コイツと離れたせいだ。

「お前も早く強くなりなせェ」

そう言って神楽に番傘を返すと、定春の頭を撫でてみて頭を噛まれる。

「ぷぷぷ…かっこつけ…」

「うるせェ!バーカバーカ!クソガキ!クソチャイナ!」

ねぇ、その技ってどこで覚えたの?
神楽のその言葉は、嫉妬心とわかっているから…まだ怖くて口に出せない。

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