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□沖誕2015ver
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嫌でも覚えてしまう恋人の誕生日。
それはもう何日も前の話である。
祝いたい祝いたいと思いつつ恥じらいでおめでとうすら言えずに終わってしまった。
当日は姉のミツバ、近藤、土方と家族で誕生日会をしたようで、プレゼントを渡すタイミングもわからなかった。

この中身もこれで良かったのかわからないし…
可愛くプレゼント用に包装された袋を軽く振ってみる。
中からはカサカサと箱に何かが当たる音がした。

お揃いのマグカップって…気持ち悪いとしか思えないアル

誰にも相談できず、一人で買いに行ったものの、結局なにを渡して良いかわからず、店員さんから言われた通りに対となるお揃いのマグカップを購入してしまった。

まず私自身もマグカップとか使わないネ…お揃いとか絶対絶対使わないアル


「おい、話聞いてんのかィ?」


ハッと神楽が向かいを見ると不服そうな顔の沖田が居た。

あ、そういえば居たんだった。

いつもいつも大学で顔を合わせていれば何となく居るのが当たり前で気にならなくなってきていたのである。


「あー、就活大変だナ!まあ、どうにもなんなくてもマヨ兄に養って貰えば良いアルよ!」


「だから内定二個もらってどっちにするかまた別のとこ狙うかって考えてんでィ。あのマヨラーからは一銭の援助も受けねェよ。遺産相続はしてやっても良いけどな」


太々しい顔でそんなことを言ってのける沖田は周りからはどS王子と好評である。
確かにこいつは顔だけ見ていればたぶんそう腹立つことはない。
この顔でこの性格だから最悪なのだ。


「高給なとこ行けヨ。でさっさと私に貢ぐネ」


「はあ?お前と付き合ってやってるだけで有難いと思えよな」


ギリギリと睨み合うも、2人を囲む周りからはただのイチャイチャにしか見えなかった。


「でさ、試験終わったら夏休み入んだろ?」


「あ?ああ」


不意に出てきた話題に神楽は脳がついていけず適当な相槌しか打てない。


「その間お前と会いたくねェ」


「あ?私も会わなくていいなら会いたくねぇヨ」


速攻でそんなことを答えてしまって、後悔をする。
夏休みに入るまであと6日、それまでに何とかプレゼントを渡しておめでとうの言葉を伝えておかないとあのプレゼントはお蔵入りだし、夏休み明けにおめでとうなんて遅すぎる。
もう既に遅れている分、どんどん気が重くなるばかりだ。


「じゃ、そういうことでィ。夏休み明けにな」


さっさと食堂を出て行く姿に、え?と言葉を投げかけて気がつく。

そっか、もうこいつ受ける試験終わったんだった…。

必要な単位数、必修も押さえてしまった沖田は卒年となる前期の授業はスカスカだった。
それに比べ要領のあまり良くない神楽はガタガタで、特に新入生であるので講義はギチギチに詰め込まれている。

ボチ飯確定かヨ
てか、どうやっても夏休み明けにしか渡せない…?

今日は持ち歩いていないことに後悔する。

呼び出し、または押しかけ…?
そんなことできるわけないアル

ボーッとスマフォのアプリを起動させる。
連絡しようと何度も打ち直して、やはり怖くなって送るのを躊躇う。

会いたくねぇってなにアルか…無理に会おうとしたことなんてないくせに。

このまま連絡を絶ってしまえば、この乙女心が溶けて消えてしまえば、こんなこと悩んでウジウジしなくても良いのに、なんて無駄なことを考えてしまう。


「好きって言ってきたのお前だろうが」


文句を口に出して言えば、少し楽になる気がした。
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