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□わくわく新学期
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神楽はコソコソと木陰の影を移動して行く。


「オリエンテーションオリエンテーションって、当たり前のことばっかり説明されてもめんどくさいだけネ」


誰にも聞かれないような愚痴をこぼしながら向かっているのはひと気の少ない何処か。

始まったばかりの高校生活は新しい場所や教室に新鮮さや面白みを感じていたが、やはりどうも神楽には座学は似合わず…協調性はあるもののやりたいことだけしかしないというポリシーは貫かれていて一人行動が普通であった。


「良いとこみっけ」


学校裏の大きな木の下へと神楽は導かれるように足を早める。

ちょうど職員室横だし、生徒は絶対通らない。上に職員室のすぐ横でサボるなど誰も気づくまい。
窓すらつかないような裏庭なのである。


「なんだ、先約居たアルカ」


眠たそうな瞳をどうにか開き神楽を迎える。彼は同じ制服で教師ではなく同じ生徒であるという結論に至った。


「お前もサボりアルカ?」


「まあな、めんどいし。こんなんやっても必要ねぇし」


サボり慣れしてるかのような寛ぎように少しだけ親近感を覚える。
神楽が少し感覚をあけて同じように木の下へと入ると彼は不機嫌そうな顔を向けた。


「ここは俺の陣地でィ。入ってくんな」


「学校にお前の陣地も何もあるわけないだロ」


バチリと視線と視線がぶつかり火花が散る。
こちょこちょ攻撃でもしかけてやろうと両手で襲いかかると彼もその両手を受け止めお互いの手を組むようにしてぶつかり合う。


「へー、女のくせに馬鹿力だねィ」


なんて余裕そうに呟かれたら神楽も黙ってはいられない。


「男のくせに女に負けるなんて恥ずかしくないアルカ?」


バカにするように笑い上げてみるも彼はムッとした顔で睨み返すだけだ。


「剣道じゃ先輩にも余裕で勝ってらァ。お前がゴリラなだけでィ」


その身体の組み合いはどちらが勝ちともなくめんどくさくなってやめる。
お互いに木陰に入り真っ青な空を隣に並んで見上げた。


「お前、名前なんて言うアルカ?」


「おめェに教えるような名はねぇよクソチャイナ」


「はああ!?レディーに向かって失礼アルヨ!?そのあだ名だってどうせ喋り方でつけたんだロ!?」


「よくわかったじゃねぇかクソゴリラチャイナ」


「ゴリラ増えとるわ!」


関西人ばりのツッコミを入れつつ口喧嘩こそは勝敗をつけようと罵り合いがはじまる。


「バーカ」

「バカって言った方がバカアル、バーカバーカ」


幼稚な言葉の会話は最初はイライラもしていたけど、あっという間楽しさが湧いてくる。
それはどちらもであった。
罵り合って、全然面白いことなんてないのに、そばにいるだけでなんだか楽しい。

それからずっと、2人は意味のない幼稚な言葉だけを吐き続けた。

どれだけの時間が流れたのだろうか、校内からは午前の授業が終了するチャイムが聞こえてくる。


「あれ?もう授業終わりアルカ?」


「ん、これから飯でィ。じゃーな」


それだけを言い終わると今さっきの会話を完全に無視してその場を立ち去ってしまった。

結局名前もクラスも聞けていない。せっかくだから友達になれたら…なんて高校一年生の神楽は淡い期待も抱いていたのだ。
夢だった高校生活。あいつは腹が立つけど、あいつのおかげで楽しくなりそうな予感がした。
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