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□ヤキモキ
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部屋の隅に転がっている彼を抱き寄せてみる。
それは神楽が落ち込んだ時、ごく稀にしか見せない甘えだ。
背中から抱きかかえられた沖田は今さっきまで見ていたスマホから目をそらし、後ろの様子を伺おうとするが抱きしめられた力が強く雰囲気だけしか伝わってこない。
もっと、甘えてくれば良いのに
そう思う沖田もよほど落ち込まない限りは神楽に弱音を吐くことなどない。
お互いに強がってばかりの見栄っ張りカップルだ。
「何かあったかィ?」
沖田がめんどくさそうに問いかけると、神楽はピクリと反応した。
「何もないアル」
ここまで甘えといて…
少し寂しい、と沖田は思う。せっかく見栄っ張りな2人が好きだと告白し合いやっと恋人になれたのだから、弱味の一つや二つ、弱音の三つや四つを知りたいのだ。
沈黙を抱えて数分
やっと時間が動き出したかのように、神楽が口を開く。
「私、お前と付き合ってるよナ?」
「うん」
唐突な質問であったがそれは即答。NOなどあり得ない事だから。
「お前、知らない人からも名前呼ばれるんだロ?」
「そりゃ、真選組って有名だからねィ。勝手に呼ばれて腹立たしくはあるけど」
また小さな沈黙が二人を包み込んだ。
「私、お前の事、好きアル」
「…!」
沖田は神楽の腕をすり抜けてごろりと向きを変える。それは神楽と向かい合い目を合わせた状態。
今にも泣き出しそうな神楽に沖田は何も言葉をかけることなく抱きしめた。
「な、何アルカ!離せ、バカ」
ついつい出てしまう暴言にも沖田は慣れたもんでポンポンッと背中をさすってやった。
「たまにはいいだろィ?」
抵抗をしない神楽に沖田はそっと腕の力を抜きおでことおでこをくっつけて神楽を見つめる。
今にも涙をこぼしてしまいそうな神楽の瞳に吸い込まれた。
「…総悟」
神楽が言い終わるか終わらないかの間に神楽の口を唇で塞いだ。
次にお互い目を合わせた時には2人とも瞳に雫を抱えている。
(やっと呼べた)
(やっと呼ばれた)
ヤキモキ
「ふぅん、神楽にも嫉妬心があるんだねィ?」
「うるせぇ!て、なっ名前…!」