SS2

□キライ→スキ
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あいつの口が悪いところが嫌い
あいつが笑ったところが嫌い
あいつの生意気にかっこつけるところが嫌い
あいつが不意打ちでこっち見るところが嫌い
あいつの目線が嫌い
あいつの存在が大嫌い

考えれば考えるほどに嫌いなところが出てくる。それはそれですごい存在なのかもしれない。でもやはり、まとめてしまえば私はあいつがキライ。



「なんでィ、こっち睨んでんじゃねェ」



「偶然目があっただけアル。別に睨んでないネ」



目線をそらすがその先に見るものはない。あいつの動向が気になって他なんて見られない。
それでもやっぱりまた見るのは、誤解を生むかもしれないから嫌だ。私はこいつに好意なんて持ってマセン。嫌いなんデス。
誰にも見えない心の中で否定する。
あいつはというと団子屋で呑気に団子を食べているところだ。時々食べているところを見るから好きなのかも知れない。
三本頼んでいたうちの二本目を口の中へ頬張ると、またこちらを見ているとからかうように笑った。

しまった!またいつの間にかあいつのこと見てた!

こうやって、あいつがすぐ私の視線に気づくところ嫌い。



「欲しいのかィ?」



左手にはくわえている方の団子の串を持ち、右手であと一つ残った団子の皿を小さく上げた。団子に絡められたみたらしが太陽の光に反射してキラキラと美味しそうに光る。
ヨダレがダラダラこぼれたがそれをどうにか拭って傘を持っている手とは逆の左手を差し出した。



「…欲しいっていうか、その団子がお前には食べられたくないって言ってるアル」



「いつから夜兎ってのは団子の声が聞こえるようになったんでィ」



はーあっと飽きれたため息を吐きながら団子の皿を自分の隣の元の位置に戻した。
ポンポンと隣を叩いて私にここへ座れと促す。

お前の隣は嫌い。

心の中で呟いてからお団子を挟んで沖田の右隣に座る。
おばちゃん追加ーっと慣れたように店へ伝えるとおばちゃんが奥の方から団子三つを皿の上に乗せて運んでくる。



「ありが「いや、これ俺の分、でこれがお前のな」



せっかく新しいのをとってくれたんだとお礼を言おうとしたが違った。私にはみたらし一つ、こいつにはちゃんとお団子三つ!ていうか、二つ食べてるんだから五つ!
なんて食い意地の強い奴なんだ!

そんなことを思いながらも恥ずかしさで顔が熱くなる。
沖田は平然と団子を手に取り口元に運ぶ。
私も負けじと串を掴んで口いっぱいに団子を頬張った。



「意地悪、そういうとこ嫌いアル」



「はいはい」



そうやって簡単に流すところも嫌い。
好きは嫌いで嫌いは好きで、オセロみたいに簡単にコロコロと色を変えてしまうの。



「ほんと、嫌い」



そういうとこ、好き。
いつかすべてがこれに変わってしまうのだろう。

あいつの口が悪いところが好き
あいつが笑ったところが好き
あいつの生意気にかっこつけるところが好き
あいつが不意打ちでこっち見るところが好き
あいつの目線が好き
あいつの存在が大好き

私はあいつがスキ。



キライスキ

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