SS2

□転生少女
1ページ/1ページ

少年は空を見ていた。ずっと広がる無限の青は少年にとって大きな敵にも見えていた。



「あ!見つけたアル!」



声の聞こえた後ろを振り返るとピンクのようなオレンジの髪色のお団子頭と瞳の色の青い見知らぬ少女が立っていて、少年が首をかしげる間もなく少女から飛び蹴りをしかけられる。少年はわかっていたかのように身をかわすと少女は嬉しそうに口角をあげて笑った。

見るからに喜びのオーラが飛び交っているみたい。



「いや、誰でィ」



飛び蹴りから無事に着地したところから全力ダッシュで今度はパンチをしかけてきた!女子としてどうなんだろうと思いながらもどこか嬉しくもある少年だった。
ビュンッと勢いも重さも兼ね備えたパンチを素手で吸収すると逃げられないように手を掴む。やはり少年の方が手の大きさがあり少女は悔しそうに奥歯を噛んだ。



「今度はお前が覚えてないアルカー!?めんどくさいアル!」



意味のわからない反応に少年はまた首をかしげる。この少女は少年の知る普通とは全てが違っていた。瞳の色も髪の色もこの胸の高鳴りもその言葉も、全てが特別に思える。



「覚えてないってか会ったことあったけかィ?」



「覚えてない方が悪いアル!説明するかボケ!」



意味のわからない口の悪さに困惑している様子だったがもう話しても無駄と理解する。少年は一つ賢くなった。



「一つ教えるとしたらお前の"運命の人"アル」



少女は照れ臭そうにそうボソリと伝えて腕を少年の手の中から無理やり引き抜いた。
すぐに少年が手を離したためによろけて少年を睨んだが少年は何食わぬ顔だ。



「お前、頭大丈夫ですかィ?」



「うるせーヨ!前、お前が似たようなこと私に言ったんだからナ!」



少年の頭の上にはハテナがたくさん浮かんでいるようだ。それでも少女は詳しいことを説明しようとはしない。
クルリと背を向けて哀愁を漂わせるだけだった。
ぎゅっと硬く握る手を少年はいつの間にか自分の手で包み込む。自分でもどうしてそんなことをしているかわからないとうい表情である。



「何アルカ」



「お前がグーだから、俺がパーな。俺の勝ちでィ」



普通のことのように語る少年が面白くて少女フフフと笑った。



「相変わらず、照れ屋アルなー」



知らねーよと少年は言おうか悩んでからその言葉を飲み込む。きっと、照れ屋だっただろう。照れ屋だったに違いない。何の話かさえわからないのに、それはどこか確信を掴んでいた。



「どうせお前は私を好きになる運命だから、せいぜいもがけばいいアル」



楽しそうに笑う少女を嫌いかどうかなど考えもしなかった。答えは既に決まっているから?少年にはわからない。



「意味わかんねーけど、うん」



少年は理解したように力強く頷いた。その隣りで少女は泣きそうに笑うのだった。青い瞳を太陽に透かされて、それはそれは綺麗で、二人ともずっと前から知っていたように行動も考えも全て見透かしたように並んで空を見上げた。

少年にはこの広大な空がどう見えるようになったのだろうか



転生少女

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ