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□後悔シリーズ2
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思いを、想いを、ちゃんと伝えるのは難しいってわかっていた
何度となくチャンスはあったのに気がつけば憎まれ口以外の会話ができなくなっている
それはいつからだったのか考えれば最初からだったのかもしれない



「そのグルグルメガネ、いつ見てもダサすぎでィ」



今日の初めての会話はこれ
たくさん考えたハズなのに、最終的にこうなってしまう

隣りの席のチャイナは嫌そうに顔を歪ませて"ゴミムシが"とでも言いたげな視線を向けた



「お前のそのアイマスクより断然可愛いと思うアル」



今にも突っかかって来そうだったが、今この授業、生物の担当がペドロ先生なせいか小声で反撃してくるだけだった
俺もあまりこの教師からは目をつけられたくない
良い意味にも悪い意味にも…目立ちたくない…
言い返すのも気後れした俺は机を軽く蹴ってから可愛くないと言われたアイマスクを装着して教科書をたててから机に伏せた

チャイナから数え切れないほど机を蹴り返されたが睨んだだけで何も言わなかった

最初に出会った時からでも、ちょっと前からでも、もっと違う触れ合い方をしていれば、今の関係は変えることができたのだろうか
やっと授業が終わるとさっさと教室を飛び出していつもは立ち入り禁止の理科準備室に忍び込んだ

だいたい生徒には有名なサボりゾーンで、でもやはり暗黙の掟なのか上級生しか使うものは居なかった
今日もやはり使ってる生徒は居なくて使用中の合図に鍵をかけようとした時だった

ガラッと勢いよくドアが開いた



「わっ!お前なんでそこ突っ立ってるアルカ!?」



正直俺も驚いたが驚いた顔するのも格好悪く思えたのでシラけたような素振りを見せる



「どうせお前が追ってくるだろうなって思ってたんでィ」



誤魔化すように振り返り窓際の壁にもたれて座り込んだ



「そんなストーカーみたいな言い方すんなヨ!お前が勝負の途中で逃げ出すからとどめを刺しに来ただけアル!」



「ま、俺のことストーキングして来たことには変わりねェだろィ」



チャイナは言い返せなくなったのか口をつぐんでドアの前に突っ立っていた
下から見上げるとチャイナはそろそろ暑くなってきたからかジャージをはいていなかったため、少し長めのスカートながらも生足で
つい食い入るように見てしまう



「何ジロジロ見てるアルカ?変態」



「自意識過剰」



実際はけっこうエロい目で見ていたのだけど
そんなことは悟られてはいけないと自分のプライドが立ちはだかる
もっと言うと、チャイナのことが好きってこと自体、自分のプライドが許すことはなかった
絶対に気づかれてはいけない禁句ワード



「見てたアル!エロい目で見てたアル!絶対!」



「…すごい勘違い女だねィ。とりあえずそこの鍵しめろよ」



もう授業が始まる時間だと学校独特の無駄に釈をとるチャイムが鳴り響いた
これでもう生徒はこないんだろうが、念には念をだ
使用中の合図
チャイナは不機嫌そうな顔をしながらもドアの鍵をかけた



「お前、私のこと嫌いアルカ?」



クルリと振り向くと窓際の俺の目の前にきてとまった
揺れるスカートとなかなか拝めない生足は相当な刺激を俺に与えていた
その中でこの質問である
どう反応して良いのか、わかるやつは女慣れしてる奴だけだろう



「…なんでそんなこと聞くんでィ」



いきなりこの教室に飛び込んでくるし、
生足のせいかいつもより女っぽく見えるし、
ついていけない
そんな自分がもどかしくて嫌だ



「…前から思ってただけアル。他の女子と扱いが違うネ。意地悪ばっかりだし、喧嘩くらいでしか会話しないし。」



何も言えなくなるほどに照れ臭くて仕方なくなる
それって、俺がチャイナだけ特別扱いしてるって意味じゃねェか
本人にまでバレバレなんじゃないか
顔を覆いたくなるほどにだんだん頬が熱くなるのを感じた



「…。」



やはり何も言えないままの俺に
チャイナは何も言わずに俺の隣りに座り込む
前から見たらきっとパンツ見えてるだろうな、なんて



「何アルカ、図星かヨ」



目線を隣りに流してチャイナを見るがよく見えなかった
うつむいているようだ

こんな自分が嫌なら、変えるしかないことくらいわかってるよ



「おい、」



言葉につまりながらもちゃんと隣りに顔を向けてチャイナを覗き込む

あ、パンツちょっと見えた
水色のしましまですか。夏ですね。

目が合うとチャイナがゴクリとツバを飲み込んだのがわかる
俺もそれに合わせるかのように息を飲んだ



「俺はお前のこと好きでィ」



大きな瞳がまた一段と大きく見開かれて
透き通るように白い肌は花開くようにピンクに変わる
俺はきっと、ゆでだこみたいに赤くなってるんだ



「っからかってんじゃねーヨ!」



急に大声をあげたかと思えば
今までに見た中で一番可愛く顔を手でおおった
クシャミをする時だってアクビをする時だって一般女子のような可愛い仕草はしないくせに
ほっぺたを両手で優しく包むようにおおって伏し目がちに俺を見上げる

なんでもっとはやくこのからかい方に気づかなかったんだろう
可愛い上に、面白くて
このままキスでもしてやったらどうなるんだろう



「…好きだ」



「え、う…ウソだロ」



「うん」



軽く頷いてから茶化すように笑うとチャイナはもう!っと声をあげながら一発俺を叩いた
力加減ができてないのか死ぬほど痛かった
心も身体も彼女にやられてしまってるようだ

(もっとはやく好きって言えば良かった)

この言葉が
深く深く突き刺さり続けた



後悔シリーズ2



「好きアル」

「え」

「ウッソー」

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