SS2

□終わる世界
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そっともう一度思い出せるように
ゆっくり瞬きをした

ずっと一緒に過ごしてきたと思っていた時間がもし全て嘘だったら
なんて妄想をして思い浮かべる
この時間も作り物ならば、幸せも誰かによって仕組まれたものならば
騙されたままでかまわない

頬に触れる指の感触に目を開けると
その長い指で頬をつねられた



「チューしてほしかった?」



「違いマスー。お前の乙女脳には本当に驚かされるアルな。」



つねる指を手で払うと
その払った手を掴まれる
少しだけ痛い、跡がついてるくらい



「女の子なんだからもっと優しく扱えヨ!色変わってるネ!」



その腕も振り払えばサドはなにもなかったかのようにそっぽを向いた



「女の子、ではないと思うけどねィ…」



「ああ?」



バカにしてるような目線はただかまってほしいサインで
私はいつもその罠にかかってる

こうやって普通に話すのも、もうそろそろ最後
この物語が終われば、消えてしまう
誰にも知られることはなく、ひっそりと過去を思い出すだけ



「何?」



何か考えてる私に敏感に反応するのはいつものこと
目を合わせて笑えば目をそらすのも、怒ればからかうのも、からかえば怒るのも。いつものこと。
このいつものことが終わってしまう。



「何も、なくなっちゃうネ。」



触れ合える距離に居るのも今だけなのだろうか
不安になって目をそらせば追いかけて来る視線
天邪鬼な自分たち
これからまた近づける時はくるの?



「何もなくならねェよ」



振り返ればもう目をそらしてる

それってこういうこと?

聞いたって答えてくれないから
私は勝手に満足して笑っちゃう
絡めた指先で考える

この世界がずっとここにありますように。



終わる世界に

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