SS2

□後悔先に立たず
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死ネタ、流血注意












「ヒトゴロシ」



気がつけば手には血まみれの人が居て
その人はもう呼吸をすることはないと一目でわかった



アア、コロシチャッタ



心がざわざわとざわめいて
私は私のやったことが思い出せなくて
力なく座り込む



コロスッテ、タノシイ



楽しくないよ
いらないよ
負けたくなかったよ
夜兎の血なんかに



「チャイナじゃねーかィ。とうとう捕まったのかよ。どうせ食費がなかったとかだろ?泥棒はいけませんぜィ?」



なんで、あなたがここにくるの…?



ここは天人だけが収容される場所
頑丈に作られた特別な収容所



「なに、しゃべりたくてもしゃべれねーかィ?」



天人にはしゃべれないようなマスクもつけられ、食事をする時だけに外される
もっと危険な天人になると流動食らしい

目を下に落とす神楽に沖田はしゃがみ込んで目を合わせた



「マスク、外してやらねーでもねーよ?」



ぶんぶんと首を横に振る
その反応に沖田は眉をひそめた

サドは知らないの?
私の過ち
このまま強制送還か死刑になるような事を私はしたんだヨ。
もう、誰も殺したくなんか…



「…そっか。そういえばお前夜兎だったな。」



"夜兎"その響きが"バケモノ"と呼ばれた気がした
沖田はただ思い出したかのようだったが
神楽の中に深く突き刺さる

コロシタイ
コンナヤツグチャグチャニ…

心のざわつきが広がり消えていく理性

やだ。
サドとは、対等で居たいのに。



「んうああああああ!!!!!」



神楽のくぐもったうめき声に沖田はゴクリとつばを飲み込む

土方さんが頑なに隠した事件
天人が捕まったとか人が死んだとか
そんな事しか報告がなくて気になっていて
それに重なりチャイナを見かけなくなったと思い
何か関係があるのかと考えていたらコレだった
自分なりに調べて首を突っ込めばチャイナがここに居た

殺したのは一般市民
万事屋もその場には居たが重症ですんだ
今も病院には居るが一応生きている
自分たちが止められなかったと悔やむ旦那を見て、俺が居たら止められただろうかと考えた

"旦那が無理なのに俺なんかが止められるわけねーよ"

わかっている言葉は心の奥底に捨てた
いや、捨てきれなかったが

もっと本当の本音は
人殺しなんかしてない
チャイナがやったんじゃない
そう思いたかった
現実を全て自分の良いように改変した
そんな自分が愚かだって事はすぐに痛感していたはずだった

目の前に居るのは…チャイナ
チャイナ以外の何者でもない



「沖田隊長!大丈夫ですか!?」



駆け寄る看守に軽く手を上げて答える

俺はまだコイツをバケモノにしたくない
誰かの中では"バケモノ"になってしまっているのかもしれない
それでも俺の中には"神楽"しか居ないから



「おい、チャイナ。自分に負けたくねぇっつってたろ。負けてんなよ。俺がやる前に、やられてんじゃねーよ。」



「ん…、んふふふ…フフフ…フフフフフフフフフフフフフフフフフフ…!!!!!」



狂ったように手錠のついた腕を鉄格子に打ち付ける

鉄格子が少しずつゆがんでいく気がした



「隊長、離れてください!暴れたら銃殺許可もおりてます!」



「…。」



「んう…。んううううううう!」



神楽が自分と戦っているのはすぐにわかった
でも沖田は見たくなかった

沖田がゆっくりとその場を去っていくのを看守は囚人に銃を向けたまま動かなかった

ソレはチャイナ
ソレはバケモノ
ソレは囚人

チャイナは…天人…
俺たちとは違う生き物

それでも、チャイナは
俺の大切に思ったモノ

友達でもなんでもないのに
何故か大事で
あんなにつえぇのに
何故か護りたいと思った



現実から目を背けてなかった事にするの?
それを見なかった事にするの?
それが、答えか?

チャイナに対しての気持ちか?
それともただの自衛か?
ただ自分を傷つけたくなかっただけの行為



「わかってんだよ…」



追い詰めたのは自分
嫌だったのは現実

事件の時
俺がその場に居れば良かった

チャイナを殺して
俺も死ねば良かった

きっとそれも
ただの自慰でしかないんだけど

…今の俺はダメで不正解しかだせないな

虚しくて
虚しくて
少し昔を思い出して笑った
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