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□壊されてるのはどっち?
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※少し暗め



手をのばして触れれば壊してしまうとわかってた
それでも手をのばしたのはただの自己満足
わからなかった、知らなかったと言えば許されると信じて疑わなかった
幼い自分
全てを清算すればどれだけの苦しみが返って来るの?
どれだけでも良い。

思いっきり抱きしめた

壊れていいよ
この手で壊れて見せてよ

幼いままの自分に抗えなくて、目を背けた



ドスンと壊れたものが落ちた
もう、動かない事は知ってる



「ごめんネ。」



「総悟!!」



土方がすぐに沖田のもとに駆け寄る
虫の息の沖田を抱えて私を無視して車に乗り込む



「サド…」



壊した代償はこんなにちっぽけな苦しみ
こんなもののために壊してしまった大切なもの

穴の中に落ちて行くような浮いた気持ち悪い感覚
そのまま落ちていった



「神楽。神楽!」



パチリと目を覚ました神楽に銀時は変な顔して覗き込む



「銀ちゃん…?」



「うなされてたぞ」



「へ…?あ、うん。ありがとアル。」



全ては夢だったと理解するのにちょっと時間がかかった。
それだけリアルな感触だったのだ。



「な、名前とか呼んでなかったアルカ!?」



「別に?銀ちゃーんとか言ってなかったけど?何、なんか恥ずかしい夢だったのぉ?」



「銀ちゃんとは違うから大丈夫アル!」



神楽が笑って答えると銀時はブツブツと言い訳をはじめたが神楽は気にせずに銀時が作ってくれた朝ごはんをたいらげた



「じゃ、遊びに行ってくるアル!」



「お前、俺の分まで食ってんじゃねぇか!!」



銀時の文句は聞こえなかった事にして飛び出す神楽
やはり銀時はそんな神楽をやれやれっと最終的には見送った



外に飛び出すと夢を思い返す

たぶん、いや、確実にあれは沖田総悟だった
今まで好きと思った事はないし、大事とも思った事ないと思っていた

あれは…夢だから?
それとも、好き?

ドクンと胸が音をたてた気がして歩みを止める

いや、好きじゃない
そんなはずない、私が好きなのは定春と銀ちゃん、新八に姉御…うん、あんなサドなんて良いところすら見つからない
全てが憎たらしい

頭の中で否定する神楽を通行人はどんどん追い越していく

沖田は遠くから固まっている神楽を見つけた
見つけたと言うより通行人が変な動きをしているから見てみるとそこに神楽がいた
と言うのが一番正しい言い回しである



「おい、何やってんでィ。邪魔。」



神楽は近づいて来ていたなんて気づかずに反射的に顔をあげてしまったため
目と目がバチっと音が立った気がするくらい嫌な顔をして睨みつけた



「わ、悪かったアルな!!」



クルリと方向を変えて早足で歩き出すと
沖田もスタスタと後ろをついて歩く

また方向を変えると沖田もまたそれについてきた



「ストーカーアルカ!?」



「露骨に嫌な顔するからムカついただけでィ。」



「ムカついたらストーカーするのかヨ!?」



目と目が合ってると意識してしまったあとの神楽はすぐに目を逸らす
沖田はその様子を見て首を傾げた



「一発殴らせろ」



「なんでそうなるアルカ!?私が殴りてぇヨ!!」



「お前のせいでなんか調子狂うんでさァ。ほんと視界に入らないでくだせェ。」



「それはこっちも一緒なんだヨ!変な夢まで見て、どうすればいいか…わかんないアル…。」



顔を手で隠してしまう神楽

そんな反応されたらどうすれば良いかわかんねぇだろ…。

沖田は困惑する頭の中でとりあえず頭をガシガシと撫でた



「たかが夢だろーが」



「…されど夢アル。」



「…女々しいゴリラだねィ。」



「ゴリラじゃねぇヨ。殺したろカ?」



神楽は撫でられた手を振り払った
沖田ははらわれ手をわざとらしく撫でた



「いってーな。せっかく優しくしてやったのに。」



「私に触んナ!!」



「なんで?」



「触られたら、心臓がギュッてなるアル…。苦しい…ネ。」



沖田はそれを聞いて神楽の手を引いて自分の胸の中におさめた
神楽が唸りながら暴れてもその腕ははなされない。



「ギューギューなって俺の腕で死んじまえ。」



"壊れていいよ
この手で壊れて見せてよ"

あの時の感情が全て思い返される

私の方が…。

抱きしめ返す神楽の手に沖田はクスリと笑う
二人とも加減は間違わない



壊されてるのはどっち?



「お前が死ねヨ」



「お前が死ねィ」

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