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□聞こえなくていいから
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雨の日が続いていたこの頃
今日はそんな日とは違う綺麗に晴れ渡った空だった
五月晴れというやつだ



「今日も傘さしてんのかィ?」



「しょうがないだロ。日差しが強いから特に大変なんだヨ。」



普通は雨の日に傘はさすもんだ
そういえばこいつは人に似ているがちがった
天人だった。
ちゃんとした名称で言えば夜兎か。
夜のうさぎ…ねぇ?



「何アルカ?」



俺は黙ってその傘からのびる白い肌をじっと見つめる



「日焼けとかしてみてぇって思ったことねぇの?あんまり白いと気持ちわりィ。」




「…お天道様拝んでみてぇとは思うけど、そんなこと思ったことねぇヨ。」



白いとこしかうさぎっぽくねぇ
かわいくねぇし、耳ねぇし。



「へぇ…」



「なんだヨ。善良な市民が歩いてるの睨んできたかと思えばそれだけアルカ?」



「うん。まぁ。」



「ムカつくアルナ。ふん。もう行くアル。」



その場を離れようとするチャイナ娘の傘を掴む



「おい、離せヨ。」



「お前がこっちくれば良いんじゃね?」



くるっと振り向いてキッと睨まれるがよくあることなので気にしない。



「離れたくないならそう言えば?」



「ああ!?」



傘をとっぱらってやろうとすると素直にこっちにきたので傘から手を離す
チャイナは不機嫌そうだ



「何アルカー?」



「サボるから付き合え。」



「は!?一緒なんか嫌アル!」



ダッシュでその場を離れるチャイナを今度は捕まえられなかった
まあこのままサボってしまう気分だから追いかけてみる



「ぎゃー!!ついてくんなぁ!!!」



「お前が俺についてこねぇからしょうがねぇだろ!」



「意味わかんねぇヨ!」



やっとの思いで追いつき捕まえる



「つかまえたぜィ?」



「なんでだヨ。」



「それは…」



好きだから
そう伝える前に思いとどまる



「暇だから?」



「仕事しろヨ。」




きっとこの言葉を君はわかってるだろ?



聞こえなくていいから

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