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□最後の時に、
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そろそろ日付けも変わる頃
小さなケーキで小さな誕生日会をしたのが楽しかった
近藤さんがいつもよりいっぱいかまってもらえて
土方さんのことも死なねーかなーと思いつつ祝ってくれたことに少しくらいは嬉しく思う

明日も仕事だからと解散になり
布団を敷いて寝るか



「サド…?」



ガタンっと音と共に天井裏から降りてきたのはいつも気に食わないチャイナ娘



「お前…何やってんでィ?不法侵入で逮捕してやろうかィ?」



こいつはいつも変なことをやらかすからさほど驚かなかった
いや、さすがに少しは驚いたが



「お前、もう寝るアルカ?」



「あ?あぁ。」



意味のわからない質問に返答すると
よっしゃっと小さくガッツポーズ



「なんでィ?」



「今何時アルカ?」



「あー、0時48分だな。」



「まだちょっと時間あるアルな。」



未成年がなにやってんだか
意味のわからない質問してくるし
今日は楽しかったし、楽しい気持ちで終わりたい
これからめんどくさいことに巻き込まれるのはめんどうだ



「めんどうごとならさっさと帰れ」



「違うアル!ただ、お前にただ…」



「何?」



いつもと違う
いつもならもっと女思えないような行動するくせに
今日はしおらしいもんだ



「お前に、伝えたいことがあるんだヨ」



「は?こんな夜に?」



どんな話なのか
そりゃ気になるが
どうしてこの夜中なのだ昼間は確かにいつもチャイナが居るところを巡ってもどこにも居なかったのに



「うん。誰より最後に言いたくて」



「は?」



時間はチクタク
と進む
もうそろそろ今日が終わる



「お誕生日おめでとうアル」



その言葉に目を丸くした
絶対言われないと思ってたし、知らないと思っていたから



「気持ちわりィ」



「おぃぃ!!!ムードぶち壊すなヨ!!!」



「…だってお前がそんなこと、言ってくれるなんて想像つかねぇもん。しかも、俺だし。」



「ん。でも私は…お前だからこそ、最後に言いたかったアル。」



「なんで?」



そう聞くとなんか少し遠くを見つめた気がしたが
すぐに帰ってきた



「お前は絶対私が知らないとこで死んじゃうだろ?」



「…。そーかもなー。」



俺たちは普通の人間より戦うことが多い
戦うのが仕事でもある
それのせいでたくさんうらまれたりもするんだ
いつ死ぬかなんてわからない
そこに居合わせるやつなんて一人も居ないかもしれないんだ



「人間は死ぬ前にたくさんの思い出が頭の中をグルグルするって言ってたカラヨ」



「だから、もっとわかりやすく言えっつーの。」



こいつの言ってることはきっと走馬灯のことだろう
だからってなんでなのかなんてわからない



「その時、きっと誕生日だって幸せな記憶だからすぐに思い出すだろうから」



「それなら昼間にこいよ。いくらゴリラでも夜はいろいろあぶねぇんでィ。」



少ししゅんとして
でも何かちゃんと思ってる事があるようでゆっくり口をひらいた



「お前の一番最後の記憶が、私だったら良いなって思っただけアル」



その返事に少し戸惑う
なんか、告白をされたような気分だ



「俺に最後に想ってほしかったのかィ?」



「悪いかヨ?」



その目は挑発的でそれでも俺をドキドキと心臓を動かした

かなわねぇな

そのまま帰ろうとするチャイナの腕をとる



「何アルカ?」



「お前殺るのは俺だから、最後はちゃんと俺を見て死ねィ。」



「それは楽しみアルなー?」



その瞳はまた強気に光り
俺の心臓をどんどん刺激する

君は知らない
俺が死ぬ時はきっと君の名前を呼ぶよ
その時まで



「チャイナ」



この呼び方で居させてくれ



最後の時に、



「何アルカ?」



「送って行ってやるよ」



「ふん、まあついてきてもいいアルよ?」



「そりゃどーも。」



「ふふ。」



「なんでィ?」



「へへ。」



「バカ」



「…好き」

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