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□わかってるよ。
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「そうちゃん、お誕生日おめでとう。もう18歳ね?」



「あ、姉上…!!ありがとうございます!!」



「今日の晩ご飯は何が食べたい?」



「姉上が作るモノならどれも大好物です!」



土方コノヤローと一緒に食べなければもっと最高です!!

心の奥にそれを抑える
今日は誕生日なんだし、わがまま言うとかより姉上が笑ってるところをただみていたい
困らせたくない。今日だけは…!
本当は毎日だけど、そんなのはちょっと俺はお子様すぎて無理な話



「じゃあ美味しいもの頑張ってつくるわね。近藤さんや十四郎さんも呼んでお祝いしましょう?いってらっしゃい!」



姉上さえ笑ってくれるなら
この世の中は平和だ
きっと俺にはそれしかないんだ

つまらない奴
そう、俺は人からどう思われてるのかなんてわからないけど…
きっと、地味だとかパッとしないとか…そんな事はないのに
シロクロで白と黒で全てが表されてる
ただ、つまらない
つまらない奴なのだ。



「ほあたぁぁぁあっ!」



「よっと…」



いつもちょっかいをかけてくる…?
チャイナの攻撃をかわす



「避けんな!ムカつくアルナー!」



「普通避けまさァ。バカじゃねーの?」



「むきー!いつもはお前がちょっかいかけてきて私が相手してやってるだロ!?」



「避けきれなくて当たってるだけだろィ?」



「ち、ちげぇヨ!!!」



今日は誕生日だ
姉上に心配かけさせるわけにはいかない
今日はおとなしく無傷で帰ろう



「さっさと学校行くぞ。」



「お前が一限サボらないのって珍しいアルな?」



「いつも真面目に行ってんだろィ?」



「嘘つくなヨ…。」



もくもくと歩いていると近藤さんらしき人が立っている

こちらに気づくとやはり近藤さんだったようで駆け寄ってきた



「総悟!今日誕生日だろ?おめでとう!これ、プレゼント選んでみたんだ。じゃ、これから会社だから、またな。チャイナさんも、また!」



近藤さんは走って駅の方に向かって行った
俺はお礼もできないままプレゼントだけ受け取ってしまった。
まあ、きっと、夜に会えるから良いか。



「え、えー?お前今日誕生日なのかヨ?」



「あぁ、てめぇにゃ関係ねぇけどなァ。」



「…!そんな言い方しなくても良いだロ!」



ふんっと鼻をならして歩きだす
近藤さんからもらったプレゼントは大事にカバンのチャックの中にしまった



「オイ…。バカ…。」



そんな声も無視してさっさと学校に向かっていろんな女子からプレゼントをもらいそうになったがとりあえず突っぱねて席につく

やっぱり女子はわけわからないもので
顔も知らねえのに手作りのクッキーとか渡してくるのはけっこうこわい
何か買った場合でもよくわからねえ奴から貢がれるのもそんなに嬉しくない

その点チャイナとの関係は楽だ
顔も見知ってるし、お互い腹を割って話したことないけど、良い意味の適当な仲だと思える

一日を真面目に過ごし、今日は姉上に褒められてもいいんじゃないか?
なんてワクワクしながら放課後に荷物を整理していた



「なぁ…。」



「まだ居たのかィ?」



「…居て悪いアルカ?」



「別に…?」



チャイナは夕焼けに照らされ全体的に真っ赤に染まってる



「誕生日…おめでと、そーご。」



「…。」



「何黙ってるアルかー!?」



ぷっと笑いが吹き出る
朝からわかっていたのだ
こいつが俺の誕生日に気づいてること何か用意してること
いつ言おうか悩んでたこと

全部わかってたのに



「お前ってやっぱ、すげぇよ」



ぎゅっと抱きしめる

今まで名前で呼び合わない分
威力は半端ないものなんだな



「か、かかか神楽様は凄いに決まってるアルよ!!!」



テンパってるテンパってる

そりゃそうか
今までと全然違う
毎年毎年知らんふりを決め込んでたこいつが、やっと言い出せたこと
俺も嬉しくてつい抱きしめてしまってること
前と全然距離が違う
それは目に見えない距離が縮まってしまった
ずっとずっと踏み出すのがこわくて
2人とも見ないふりをして、気づかないことにして
違うこととすりかえて
自分を騙して、騙して…ずっとあの距離のままだったのに
今はこんなに近くに居る



「なぁ、」



「なん…だヨ…?」



「好き…」



「うん、好き…。」



姉上ごめんなさい。
少し問題起こすかもしれやせん。
でも、責任は一生かけてとるんで…許してくだせェ

知ってたよ
ずっと前から
君のこと好きだって
俺の世界は鮮やかだって



わかってるよ。

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