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□今だけはさようなら
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チラリと公園の入り口を盗み見る
まだ彼はこない
いつもはこのベンチであのアホみたいなアイマスクして寝てるくせに
待ってるわけじゃない!
そんなわけないけど
今日は体がなまってるから動かしたいなと思ったのだ
そう、ただそれだけの理由
変な勘違いは避けて通りたい
「チャイナ」
「遅いアル!」
「待たせたなァ…」
ニマァっと笑う彼で自分の失言に気付く
「いや!待ってないアル!私はただ公園に来ただけで!体なまってるからちょっと動かそうと思っただけアル!お前とは断じて関係ないネ!!!」
一気にしゃべったため
はあはあと肩で息をしている様子を楽しげに見る彼はどSだった
胸糞悪いほどどSだった
わかってたけど
わかってても
これからなんていじられてしまうのだろうか…
「そうかィ?そりゃあ大変ですねィ?でもそれならベンチに座ってないであっち行ってろよ」
「今は休憩アル!」
「ほお?」
こいつ、
話を聞く気なんてサラサラなさそうだ
大人しくベンチから離れよう
「素直になれよなァ」
後ろから聞こえる小さなため息に
私も小さくため息
こんなんで良いはずなんかない
私だって
ずっとこんなのばかりを繰り返すのは嫌だ
ねぇ、
今さっきまでの私は無しでも良いかな…?
くるりと振り返って
彼の裾の先を持つ
「ずっと待ってたんだからナ…」
「お待たせしやした」
かがんだ彼の唇はおでこに触れて
小さく二人で微笑みあった
さよなら
今さっきまでの私
今だけはさようなら