SS2

□好きでも届かない気持ちはある
1ページ/1ページ

※失恋、悲恋そんな感じ。注意です。







好きだった
でも彼の方がもっと出会いは多くて
彼の方が大人に近くて
私との違いはたくさんあった
種族の違う2人が幸せになれないなんて誰が決めた?
そう言って付き合いはじめたのはいつだったのか
何年も昔の話



彼はもう妻がいる
私ではない誰かと一緒になったのだ
私とは全然違う冷静な瞳を持ち黒髪の彼女はとても強く美しかった

ふられた時には知っていた
彼には私以外に夢中になる誰かができていたこと
わかっていて、わからないふりして強がって
結婚式は昨日だった
呼ばれるわけなんかなかったし、呼ばれたくもなかったから良かったのだけど…

写真は送られてきた
幸せそうに笑う彼と小さく微笑む女性はとても似合っていて
ああ、遠くに行っちゃったんだなと思った



ここはどこだろう
泣きたくて
飛び出したのに
泣き疲れていて
もう涙なんて出ないの

疲れちゃった

生きることに
生きてるだけで幸せなんだって
誰かは言ってた
けどそれってただのその人のエゴでしょ?
私にはもうわからない
生きてる意味がわからないの
彼が居ればなんて言わない
私はたくさんの人を傷つけてきたことを知ってる
知ってるからどうなんてことはないけど



「こんなとこに居たんですかィ?」



「なんでお前アルカ。空気読めよバーカ。」



口癖と匂いで彼だという確信を持つのはまだまだ未練タラタラなのがバレバレすぎるだろうか



「機嫌悪いなァ。あの日かィ?」



「結婚したんだしもっとデリカシーってもんを持てヨ」



「あいつはそんなん気にする奴じゃねぇからな。」



あ、そうか
根本的に違う。彼女は私と全然違う。
だから彼は彼女を選んだの
もっと前からわかっていたハズなのに



「旦那が心配してたぜィ?いつも余裕な面してるくせによォ。」



「失恋って自殺に多いパターンだもんナ」



「あー普通に言っちゃうんだ?」



ムッと睨みつけると変わらぬ笑顔が久しぶりに私に向けられた
こんな笑顔っていつ以来だろう
はじめてだったかもしれない。



「けど、なんでだろう。本当の差って奴を見せつけられると、自分が小さく見えるアル。ありえねーくらい、ちっぽけに見えるんだヨ。」



「ふぅん。そうだな。俺も、旦那にすげぇ妬いてた。」



「は?」



「昔の話だ。聞き流せよなァ。お前助けるのはいつも旦那で俺はいつもそれ眺めてんの。いつの間にかそれが当たり前で、ああ、俺ってなんだろう?ってさァ。」



「良いだロ。お前はもう幸せ掴んじゃったみたいだし。」



「これからだよ。2人でいろんなこと経験していくんでさァ!」



キラキラした目は
私との未来ではなく彼女との未来を見ていた

私と一緒に夢を語ったあの頃みたい。

全然違うのに。
重ねて見る私は本当にバカだな。



「だからお前もさ、明るい未来だけ見とけよ」



彼の笑顔は今度は私に向けられてない
彼女との未来に向けられた笑顔だ
私と居た頃そんな性格じゃなかった

そっか
本当に居なくなったんだ
あの頃の私たち



「神楽ー!ありがとうな!総一郎くん!!」



「じゃ、俺は帰りまさァ。妻が待ってるんで。」



「おう。」



わかっていたよ
わかっていたのに目を背けてたよ
大好きだったの
あの頃の私と、あなたが
もう、居ないのに

明るい未来を見てたよ
あなたと私が一緒に暮らしてて子供が居て
幸せな家庭を
もう、居ないあなたと私の生活を

明るい未来だけを見ていたかった

願いが叶わない事はわかってる

わかってる

それでも好きでした。

私が一歩踏み出すと夏の匂いの風がふいた



好きでも届かない気持ちはある

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ