光と陰の先

□ 光と陰の先 1
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外に出ると肌寒く感じるように

なったころ一人の絵描きが

暗い町へゆっくりと足を進めていた



長く細い陰をつれて歩くその背中は

今にも消えてしまいそうなくらい

弱々しいものなのであった。





歩き始めて暫く経ったころ絵描きは

何かに気がついたのか進めていた

足を止めるとレンガ造りの家と家との

間にある人一人通れるくらいの

細い道へ足を進めたのだった




普段ならその道を抜けると

裏通りに入りちょっと変わった

本屋さんや喫茶店があるはずなのだが

絵描きが見たのは本屋さんでもなければ

喫茶店でもなく








辺りを草花が囲む大きな道だった。




ただの道ならまだしもそこには

どこかの遊園地から持ってきたような

沢山のカラフルな電飾で飾り付けられた

大きな乗り物があった



何が起こったのか全くわからず

立ち尽くす絵描きをよそに

突然動き出した謎の乗り物と

その陰に隠れていた子供たちは

だんだんと絵描きに向かって

進んできていた。



未だに何が何だかわからない絵描きは

取りあえず一歩後ずさると

横の草原へ移動し呆然と

なんとも奇妙な光景を見ていたのだった



ちょうど踊り子達が絵描きの前に来るころ

謎の乗り物は動きを停止し

楽器隊の演奏が止み、踊り子たちは

絵描きの前に集まったのだった



やっと状況を理解した絵描きは

恐る恐る口を開くと



『す、すごいね…』



たった一言で

冷たく吹く風にかき消されてしまう

くらいの小さな声で発した言葉は

目の前にいた凛々しい目をした少年には

きちんと届いていたらしく

不安そうな目で絵描きの言葉を

待っていた表情は一気に

喜びに満ちた笑顔にかわったのだった
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