光と陰の先

□光と陰の先 5
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二人が作業を始めて二時間ほどたったころ
店に一人のお客さんがやってきたのだった


「いらっしゃいませー」


店長は作業を切上げると
エプロンを外しお客さんのもとへ
駆け寄っていった


お客さんは20代前後の女性で
栗色の長い髪を後ろの方で
一つに結っていた。


「あの・・・掛け時計を探しているんですけど、小さめの物ってありますか・・・?」

「小さめの掛け時計・・・あっ!」


なにか思い出したように店長は
絵描きのほうへ歩いていったのだった


「ねえねえ智くん。今作ってるやつ掛け時計だよね?」

「??うん。」

「じゃあ一旦作業やめて待ってて!!」

「・・・了解」


そうして店長はお客さんに
一つの提案をしたのだった。


「時計選びって急いでますか?」

「いいえ別に・・・」

「じゃあ今から貴方のオリジナル掛け時計造りませんか?」

「・・・え?」


店長曰く気に入った掛け時計が
欲しいのなら自分でデザインしようっ!
ということらしい。

女性も時間が沢山あるからと
その案にのったのだった


「じゃあ私はどうすれば・・・。」

「今彼が作ってるからそこに指示してくれればいいよー即興だよー」

「で、出来るんですか?!そんなこと」

「あははは、あの小さい背中を侮ってはいけないよ」


そういうと二人はいつの間にか
淹れられていたコーヒーを
猫背で啜っている絵描きのもとへ
向かったのだった。


「・・・このコーヒー旨いな。持って帰ろうかな・・・熱っ!」

「智くん大丈夫?」

「えっ?!うわっ店長いつのまに・・・」

「いつのまにってここ俺の店・・・」

「・・・・・・あぁそうか。」

「なにその微妙な間!!」

「それで店長どうしたの?」

「見事なスルー技術。えっとこちらのお客様がオリジナルの掛け時計が欲しいんだって」

「・・・おいらが作るの?」

「だめ?」

「いやいいんだけど、店長が作ればいいのに。」

「・・・あぁ、まああれだよね?智くんが作った方がお客さんも喜ぶっていうか・・・さ?」



変な汗を流しながら
目線がきょろきょろと泳いでいる店長・・・。

絵描きは彼に向かって一言


「出来ないんでしょ?」

「ゔ・・・。」


そんなやりとりのなか
絵描きは女性が不安な顔で
待っていることに気が付いたのだった

「あなたが今回の時計主さん?」

「えっ!あ・・・はい」

「おいら智。よろしく!」


すっと差し出された白い手に
女性は一瞬戸惑いながらも
小さくお辞儀をしてを握った。


「よしっ!じゃあこちらへどうぞ」


店長は机の下から小さな椅子を出し
女性の前に置いた
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