光と陰の先

□光と陰の先 4
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突然、笑い声の響いていた草原に
終わりの時間を告げるように
鐘の音が響き渡った


「おっと、お別れの時間ですね・・・」


そう言うと子供たちは
どこからか黒いコートを取り出し
着始めたのだった


「帰っちゃうの?」


まだ話していたかった絵描きは
引きとめようと声をかけたが
なにか思い出したように
口を噤んでしまったのだった




子供たちが全員着終えたころ
絵描きのスケッチブックを持って行った
少年がなにやら自分と同じくらいの
大きなリュックサックを
ごそごそとあさり始めたのだった


目的のものが見つからないのか
リュックをあさる少年の周りには
ゲーム機らしきものやコンセントなど
見た目から想像できないほどの
近代的機器が次々に並べられていた


「たいちょー!!パコが無いよー!」


隊長と言われて振り返ったのは
あの先ほどまで絵描きと話していた
少年だった



「・・・無いってなに?」

「だから見当たらないのっ」

「パコが?」

「うんっ!」

「うんっ!じゃないだろ・・・」



この会話中も四次元ポケットか?と
疑いたくなるほど
途切れることなく物が出てくる出てくる・・・


出した物で足の踏み場が無くなったころ
一台の蛍光黄色をした
少し大きめのパソコンが出てきたのだった


「あったー!!!」

「(ほっ・・・)じゃあ頼んだよー」

「ほいほーい」


どうやらパコとは
このパソコンの事のようなのだった。


少年は膝の上にパソコンをのせると

キーボードの上を慣れた手つきで
滑らせ、エンターキーを強く押すと



先ほどまで道のほとんどを
占めていた謎の乗り物の周りを
霧のようなものが包み
ボンッと軽い破裂音がしたのだった

突然の音に驚く絵描きを見て
少年はおかしそうに笑うと
もう一度パソコンへ何か打ち込み
絵描きの前に歩いて来た


「お兄ちゃんびっくしすぎだよー!
はいこれっ!絵貰ったお礼」


そう言って差し出された小さな手には
三日月の形をしたブローチが乗っていた


「ありがとう」


受け取ったブローチを
着ていたシャツの胸元に付けると
少年の頭を数回撫ぜただった


「おーい!まさ行くぞー」


目の前の少年はどうやらまさくんと
言うらしく返事を一つすると
絵描きに手を振り駆け足で
子供たちの所へ行ってしまったのだった
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