光と陰の先

□光と陰の先 3
1ページ/4ページ


絵描きからの心のこもった拍手を

受けた子供たちは

日を浴び鮮やかに咲き乱れた

花のような幼さのある笑顔を

浮かべ近くにいた子供たちと

手を繋ぎ楽しそうな笑い声を発していた







子供たちの笑い声に気をとられていた

絵描きは、ふと

上着の端をつんつんと引っ張られる

ような感覚を覚え

目線だけをそちらへ向けたのだった



そこにはスケッチブックを

大事そうに両手に抱え

絵描きの顔を除きこんでいる

一人の少年の姿があった。



視線を少しずらした絵描きは

足元にあったはずのスケッチブックが

無くなっていたことに気がつき

少年の持っているのは

自分のものだと理解したようなのだった


大事そうに抱えられた

スケッチブックにはつい先ほど

ペンを走らせたばかりの

絵が描かれていたのだった。






沢山の子供たちに囲まれ
優しい笑顔を浮かべながら
麦わら帽子を腕に抱える
一人の女性の絵…






着色はされておらず

鉛筆の細い線で繊細に描かれた絵は

今にも声が聞こえてきそうなくらい


強い存在感を出していたのだった
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ