光と陰の先

□光と陰の先 2
1ページ/4ページ


絵描きは何が始まるのかと

身構えていたものの

すぐに肩の力が抜けたのだった








なぜなら始まったパレードは

パレードと言うには

華やかさや賑やかさに欠けていたからだ。





謎の乗り物は先程までの

きらびやかな電飾ではなく

蝋燭のような提灯のような

淡い暖かさを含んだ灯りで

飾り付けられ




音楽も小太鼓やタンバリンなど

賑やかな音を奏でる物ではなく


オルガンとアコースティックギター

その他ベルなどの

柔らかく深みのある楽器を使った

懐かしさを感じさせるものなのであった





それを見た絵描きは

心の奥にある開かずの扉の鍵が

少し緩むのを感じた。




誰も況してや自分ですらも

扉の鍵の在りかを知らないというのに

目の前にいる子供たちは

意図も簡単に扉を開けかけたのだから

子供たちへの警戒の心とは裏腹に

この子たちになら自分の扉を

開けられても良いと思った

絵描きなのだった。





パレードもそろそろ中盤に

差し掛かるというところで

楽器隊のなかにいた一人の男の子が

そばにあったマイクを手に取ると

謎の乗り物の上に登ったのだった



男の子は赤茶色の髪に真っ白い肌

一見小動物や子犬を彷彿とさせる

澄んだ瞳を一瞬絵描きに向けると

すぐに前を向き一つ深呼吸をした。




彼が絵描きの心の扉を

わずかに開かせるのは

このすぐあとのこと…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ