短編

□苦笑いが絶えない
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「ちょっと、赤司くんっ!苗字ちゃん独占し過ぎだよ!!」



「僕が名前の傍に居たいんだ。文句あるかい?」



「苗字のことになるとマジで怖いからなー、赤司」



「苗字さん、髪伸びてきましたね。伸ばすんですか?」



「◆◆ちん、お菓子いるー?」



「ちょっ、青峰っちも!苗字っちにくっつき過ぎッスよ!?ずるいッス!!」



「うるせー。オレじゃなくて赤司にも言えよ」



「勝てる気がしないのだよ」



生まれてこのかた、出来る限りひっそりと地味に、目立たず、何となく生きて来た私だったが…。神様と呼ばれる人の気まぐれな計らいからか、学校で目立ってるこのグループに目をつけられてしまった。



しかも、その出会いが何ともくさい。図書室で棚から本を取ろうとした時に、傍に居たことに気が付かなかった黒子くんと同じ本を取ろうとして、指が触れたのだ。そこから私の運命は変わり始めた。



その後、何だかんだで他のメンバーにも紹介され、そして何故だか、メンバーに気に入られてしまったのである。今の、全員から抱き着かれてしまうくらいに。もみくちゃなんですけど…



こんなに身長の高いカラフルな人たちがギャアギャア騒いでいたら、とても目立ちます。必然的に人々の注目を集め、私も視界内に入ってしまいます。困ったな…。ポリポリと頬をかいた。



「キャー!苗字ちゃん、今の仕草スッゴく可愛い!!もう一回やって!?私だけの為にもう一回やって!?」



『え?…こう、ですか?』



何気なくやった仕草をもう一度と所望されて、戸惑ったが、断る理由もなく、もう一度やってみせた。桃井ちゃんの熱い視線が少し恥ずかしかった。



「何でそんなに可愛いの苗字ちゃん!!いっそのこと、私の彼女になって欲しいっ!!テツくんが彼氏で、苗字ちゃんが彼女…!?私、幸せ過ぎて死ねる…」



男の子たちを押し退けて、より一層ぎゅうっと抱き着いてきた桃井ちゃんにあたふたとする。女の子にまでこんな対応をされて、私は尚困りました。しかも途中から何を言ってるのか分からないし…



私の肩に顎を乗せて抱き着く桃井ちゃんを、ちらっと盗み見た。凄く幸せそうな笑顔をしている。………悪い気はしないけど。怖ず怖ずと抱きしめ返した。



「さっちん、幸せそうだねー」



「羨ましいです」
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