短編
□好きだから
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『黒子くん、何読んでるの?』
『緑間くん、今日のラッキーアイテムは何?』
『青峰くん、眠そうだね』
『紫原くん、お菓子貰って良い?』
『赤司くん、将棋しない?』
私は暇を持て余していた。
いつもいつも駆け寄って来る大型犬のような黄瀬くんが、この場に居ないのだ。いつも何だかんだ言って相手をしているから、暇だったことはなかったのに
だから、誰か私に構ってくださいとアピールするが、みんな面倒くさそうな顔をして、他を当たれと言う。
全員に同じことを言われ、さすがにシュンとする。誰か一人くらい私に構ってくれたって良いじゃないか
部屋の隅っこでしゃがみ込んで、いじけている私を見て、天才5人は顔を見合わせた。
「黄瀬くんはどうしたんですか?さっきから見ないですけど」
「誰も聞いて無いのか?」
「どうせいつものファンがどうのこうのだろ?それか呼び出しでもされてんじゃねぇの?」
「峰ちんじゃあるまいしー。黄瀬ちん、勉強はまあまあだからねー」
「まぁ、このまま名前をほっとくのも多少心が痛むところだ。黄瀬のガードも緩いことだし」
グスン、と出もしていない鼻水を啜るフリをして、構ってアピールをしていると
「苗字さん、泣かないでください」
振り向くと、黒子くんが屈んで優しく微笑んでいて、ポンと頭に手を乗せられた。一瞬天使に見えた。
『黒子く―――んっ!!』
ガバアッと抱き着いてしまった。黒子くんは体勢を崩したが、私が目一杯抱き着くのを見て、頭を撫でてくれた。黒子くんだけが、唯一私から抱きしめに行く人だ。以外の方々は自ら、来てくれる。
『なんか、黄瀬くんが居なくてつまらないというか、暇というか…』
「なら、みんなで何かして遊びましょう」
唇を尖らせて呟くと、黒子くんにはあるまじき提案が出た。