F*Long

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「ああ、バンビーノじゃないか!!!」
「久しぶりジョージ、ダニエル」
「元気でなによりだ」
「ムストンさんも…懐かしいね」


サザと同様、彼らとは三年ぶりに会う。


「それにしても……首都近郊に来て驚いたわ。
 ベグニオンの駐屯兵がこんなに幅をきかせてるなんてね…
 いくら敗戦国だからって、働けるものはみな収容所送りだなんて…一体、いつの時代の話よ」
「これじゃあ、【狂王】なんて呼ばれた先代のデイン王、アシュナードの方がよっぽどましだね。
 彼は、クリミアって国そのものを滅ぼそうとはしなかったからな」
「確かに…」


3年前の大きな大きな戦い。
先代のデイン王は確かに狂っていたが、国にはさほど興味が無かった模様。
でもミカヤはそれを知らない。不安そうに疑問をつぶやいた。
 

「『国そのものを滅ぼそうとはしなかった』…それは、どういう意味ですか?」
「いいかい?国っていうものはね、たくさんの民が健康に働くから在るものなんだ。
 どんな偉い王様がいても、たった一人じゃ国は成り立たない。民こそが国の財産なんだよ」
「けど、いまのベグニオンのやり方は…デインの民を、まるで奴隷かなにかのように扱ってる。
 このままじゃ、どんどん民の力が弱まりいずれはデインって国そのものが消えてしまう…」


深刻そうに言うジョージの言葉に空気が重くなったのを皆感じた。
それはあまりにも現実感がありすぎるから。


「…どうすればいいんでしょう?どうすれば…この国はその運命から逃れられるんですか?」
「クリミアみたいにやればいいんじゃない?」
「せめてあの噂が本当なら、希望も持てるんだがな……」
「噂…?」


ジョージの意味深な言葉。
噂って…何?


「こら、ジョージ!不確かな情報を軽々しく口にするもんじゃない」
「聞かせてください!もし、希望があるならどんな小さなものでも知りたい…」


必死なミカヤの様子に、ジョージが重く口を開いた。


「…『アジュナード王の遺児現る!』こんな噂が広まっているんだ」


遺児!?そんなの聞いたことがない!!


「アシュナード王に子供がいたっていうのか?そんな話、聞いたことがない」
「あくまで噂止まりだけどね。でも…本物だったらデインにとって何より幸運なことだろう」
「先の戦争のときのクリミアのように、王家の末裔を旗印として一丸となって解放軍を組織すれば…」

「憎きベグニオン駐屯軍を国から追い払ってしまえるかもしれない!」


 ララベルが叫んだこの言葉。心臓がどくどくと高ぶる。


「その遺児は今何処に?」
「東にある死の砂漠で軍を組織するべる活動しているらしい。行くのかい?」


皆だまる。


「…バンビーノは、どう思う?」
「……僕?」


サザが僕を見て頷く。


「前の戦いの時…バンビーノが参謀のサポートをしてた位は知ってるさ。
 セネリオも褒めてたよ、バンビーノは頭がきれるって」
「そうなんだ…」
「だから聞きたい。バンビーノはどう思う?」


…。
話の内容や先ほどの戦いで、十分この国が乱れていることが分かる。
現状維持ほど、無謀な打開策は無い。
それならば、変わるしかない。


「僕は遺児を探すべきだと思う。…どうだろうか、ミカヤ」


ミカヤの目を見ると、強い光を感じた。


「わたしもそう思う…感じたことがあるの。砂漠では新しい出会いがある。
 それは、わたしたちの未来にとって必要なもの…」
「だったら決まりだ。行こう、俺たちの運命に出会いに」
「ああ、行こう!」










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